ミスコンテスト2
闘技場の支配人や、マニラによる形式的な開会の挨拶が終わると、いよいよ参加者達の登場だ。
「それでは早速参りましょう! まずはエントリーナンバー一番……」
司会者の紹介を受けながら、人間、エルフ、獣人等、様々な女性がステージに並ぶ。中には売店の店員や受付のお姉さん、闘技場備え付けの食堂のアルバイトの女の子もいた。皆あまり派手に着飾ったりせず、闘技者はいつものコスチュームであったり、いつもの仕事着でステージに上がっているが、皆美しく可愛らしい女性ばかりで、彼女達がステージにズラリと並んだ姿は圧巻であった。
ムチャは美女達に見惚れていたが、内心ではトロンがいつ出てくるのかドキドキしている。
「続きまして、エントリーナンバー十番! 前座の大道芸人としてお馴染み、美しき魔法使いプレグ嬢の登場です」
「ぷふっ!?」
司会者が口にした聞き覚えのある名に、ムチャは思わず口にくわえたフランクフルトの串を噴き出す。まさかプレグが参加しているとは思わなかったのだ。
そしてステージにはいつもより少しだけ化粧が濃く、いつもよりお色気三割増しのぴったりとした衣装を着たプレグが登場した。彼女もマニラに頼まれて、このミスコンに参加していたのだ。
ムチャが笑い出しそうになるのを堪えていると、ステージ上でポーズをとるプレグと目が合った。するとプレグは少しだけ恥ずかしそうな顔をして、美女達の列に並んだ。
「あの人、知り合いですか?」
「うん、まぁな、プププ」
しかし、プレグが参加しているということは奴も参加しているという事だ。ムチャには次に登場するのが誰かわかった。
「続いてエントリーナンバー十一番! 前座ではプレグ嬢と共にアクロバットで会場を沸かせてくれる元気印! ニパの登場です!」
ムチャは今度は覚悟していたので吹き出さないですんだ。
司会者の合図で、ニパがクルクルとバク転や側宙をしながらステージ上に登場する。
「どうもー!」
ニパがステージ中央に立つと、その微笑ましいはしゃぎぶりに、アレルの街のお父さん達や子供達が多くの拍手を送った。それに応え、ニパは更にアクロバットを繰り出す。
「ニパちゃん、アピールタイムはもう少し後ですので……」
「あ、そうだった!」
司会者に注意され、ニパはペロリと舌を出す。無自覚ながら彼女は実にあざとかった。色気は無いが、これは案外穴馬かもしれない。ニパは最前列のムチャに小さく手を振り、プレグの隣に並ぶ。ムチャはニパにグッと親指を立てた。
「えー、続きまして、エントリーナンバー十二番! 当ミスコン第三回から五回までの三冠を達成した美女の登場です!」
その紹介だけで観客達は誰が出てくるのか察したらしく、大きな歓声が湧き上がる。
「三冠って凄いですね、どんな綺麗な人が出てくるのでしょうか?」
「きっとスゲー美女だぞ。楽しみだな!」
ムチャの体がズイッと前に出た。ギャロの目も爛々と輝く。
「人妻になっても子供を産んでも彼女の美貌と強さは変わらない! 最強の夫婦の片割れ、ミセス・カリンの登場です!」
ムチャはちょっとだけがっかりした。
カリンは確かに美人ではあるが、あの鬼のような暴れぶりと対峙すれば、彼女を一女性として見るのは難しい。しかし、カリンはその明るさと強さと美しさで、闘技場の観客や街の人々の人気者であった。
「いや、でもああいう強い女は夜が案外……」
ギャロは何やら怪しいことをブツブツ呟いている。人形の姿で呟いている姿は実に不気味だ。
カリンが堂々とステージ中央まで歩みを進め、「あんたー! コランー! 愛してるよー!」とイワナとコランに手を振ると、イワナに昔からのカリンファン達からの氷点下の視線がグサグサと突き刺さる。イワナは気まずそうにコランと一緒に手を振り返した。
「さて、そろそろかなー」
ムチャはドッシリと椅子に深く腰かける。
参加者達も随分と出揃ってきた。そろそろ相方トロンの登場であろう。
司会者が次の参加者の名を呼んだ。
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