ナップとフロナディアの戦術
二手に別れたナップとフロナディアは、リング中央に構えるムチャとトロンの周りをぐるぐると回り始めた。ムチャとトロンは互いに背を預け、二人の攻撃に備える。
「フロナディア様、一気に決めましょう!」
「承知しましたわ!」
走り続けるナップの全身と、フロナディアの剣が光を放つ。
「喜装天涯!!」
「心の刃よ!!」
二人は早くも切り札を切った。ナップの全身には喜の感情術で作られた鎧が、フロナディアの剣には感情術の刃が現れた。
そして二人は寸分のタイミングのズレもなく、ムチャとトロンへと襲いかかる。
感情術を駆使するナップとフロナディアの猛攻は凄まじくもどこか可憐で、まるで高速でワルツを踊っているかのようだ。
ムチャとトロンはリング中央にいながらも一方的に防戦を強いられる。感情術も魔法も使う暇すらない。
「なんだよこの強さ、嘘だろ……!?」
「は、速い……」
実はナップとフロナディアは、コンビネーションの強化のために修業にダンスを取り入れていたのだ。その効果は絶大で、ダンスにより手に入れたコンビネーションは、荒くれ者達の集うケルナ闘技場で未熟な二人が勝利を掴むために一役買っていた。いや、最も重要な要素であったかもしれない。それはトリッキーな戦術を見せるムチャとトロンとは対照的とも言える真っ直ぐなコンビネーションであり、カリンとイワナ夫妻やブレイクシアのような個の絶大な強さとはまた違った強さを発揮する。
「「ぜあぁぁぁぁぁあ!!」」
ナップとフロナディアの力を合わせた一撃により、ムチャとトロンは吹き飛ばされ、リングの端へと転がされた。
硬いリングに背中を打ち付けたムチャが苦しげに呻き声をあげる。
「ムチャ、大丈夫?」
トロンはムチャが庇ったおかげでダメージは少なかった。しかしその分ムチャのダメージは大きく、これ以上戦闘を続けられるかは微妙な所だ。
「ギブアップする?」
トロンは心配そうにムチャの肩に手をかけた。
すると、ムチャはその手を掴み、何とか起き上がる。
そして言った。
「まだだ、まだやれる……」
二人を目掛けて、ナップとフロナディアが迫ってきている。
「トロン、あれをやるぞ」
「あれって……アレやるの?」
「あぁ、合体だ!!」
それを聞いてトロンは一瞬戸惑う。
しかし悩んでいる暇は無い。トロンは覚悟を決めて頷いた。
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