四人の戦い
試合開始の合図と共に四人は駆け出す。
ムチャとトロンのコンビは前衛と後衛のスタンダードな戦闘スタイル。
一方ナップとフロナディアは両名が前衛に立ち、攻守を入れ替えながら戦う速攻スタイル。
攻めの勢いとしてはナップとフロナディアのペアに圧倒的に分がある。二人はこれまでの戦いで、相手の前衛を一気に倒し、それから後衛を倒すという戦法を会得していた。
ナップとフロナディアは前衛のムチャに狙いを定め剣を振るう。
「のわっ! ほっ! わちゃ!」
入れ替わり立ち替わり襲いくる剣先を捌くのは至難の技で、ムチャはあっという間にリングの端まで追い詰められた。
「今です!」
ムチャの動きを鍔迫り合いで止めたフロナディアが叫んだ。ナップは呼吸を整え喜の感情術を発動させる。
「喜の技……喜麗脚!!」
脚力を強化したナップがフロナディアを飛び越え、ムチャの頭上へと跳んだ。後はムチャの顔面に蹴りを放てばムチャはリングアウトである。
しかし、ナップとフロナディアが互いにそうであるように、ムチャにも頼もしい相方がいた。
「大地よ」
トロンの魔法により、フロナディアの側面からリング上の岩盤で形成された拳が襲いかかる。
「フロナディア様!」
ナップはすかさず蹴りの方向を変えた。
そして岩の拳を蹴り砕く。
その隙にムチャはフロナディアを弾き飛ばし、ナップとフロナディアの間をすり抜けてリング中央へと駆け戻る。
すると今度は、ナップとフロナディアは標的をトロンへと変えた。指示が無くとも互いの意図を読み取る二人のコンビネーションは絶妙で、ムチャとトロンは対応する事ができない。
ナップとフロナディアは、トロンへと向かう途中で大きく息を吸い、喜のオーラを腕に纏う。
「「狂喜乱舞!!」」
二人の剣がトロンへと襲いかかる。
「大地よ!」
トロンは咄嗟に杖で大地を叩き、ナップ達との間に壁を作った。ナップ達は素早く左右に別れ、壁の裏に回り込む。
「何!?」
しかし、そこにトロンの姿は無かった。トロンは壁が目隠しになった瞬間に、透明魔法を発動させたのだ。
ナップの顔面に透明化したトロンの杖がフルスイングで炸裂する。
「へぶっ!!」
ナップは鼻血を噴きながらリングへと転がった。
「ナップ様!?」
動揺するフロナディアの背中に、追いついたムチャが助走をつけてドロップキックをぶちかます。
「きゃあ!!」
吹っ飛ばされたフロナディアはナップの上に折り重なるように倒れた。
すると、ムチャの隣に透明化を解いたトロンが姿を現す。
「女の子を蹴っ飛ばすのはなんか嫌だなぁ……あの人の相手はトロン頼むよ」
「そんな余裕無いよ。あの二人、想像してたよりずっと強い」
トロンはトドメとばかりに折り重なる二人に雷の魔法を放とうとした。しかし、ナップ達のダメージは浅く、素早く立ち上がり二手に別れる。
「くっ……やはり強いな」
「でも、私達だって簡単に負けはしませんわ」
第二ラウンドが始まる。
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