ナップの回想18
試合が終わった後、控え室で伸びているナップとフロナディアの元に訪問者が現れた。それはもちろん髭もじゃの巨漢である。
「なんだお前達、結局来たのか」
そっけない物言いだが、その声は僅かに弾んでいる。
「強くならねばならないからな」
ナップはベンチに横になったままゴディバドフに親指を立てた。フロナディアも真似をして親指を立てる。
「ふん。あの程度の相手に苦戦しているようではまだまだだな」
試合の相手は鉤爪と短刀を扱う二人組で中々の手練れであったが、ゴディバドフからすれば雑魚同然なのであろう。もちろん彼等に辛勝したナップとフロナディアコンビも似たようなものだ。
「で、次の試合はどうする?」
ゴディバドフが問うと、二人は声を揃えて答えた。
「「やります!」」
ゴディバドフは満足そうに頷く。
「じゃあ、明日も来い」
その言葉に二人は再び声を揃えた。
「「明日!?」」
「流石に三日連続というのは……」
「嫌なら別に良いのだが」
ゴディバドフがそう言うと、フロナディアが首を横に振った。
「私は構いませんわ」
「しかしフロナディア様……」
「強くなるためですもの」
どうやらナップよりもフロナディアの方が思い切りが良いようだ。ナップもヤケになったように言った。
「何連戦だろうがやってやる!」
「ほぉー、そうかそうか、わかった」
ナップとフロナディアは思いもしなかった。
まさかゴディバドフが本当に二人のために毎日試合を組むとは。
それからは厳しい日々の連続だった。
昼はいつも通りの修行をし、夜は闘技場で仮面騎士コンビとして戦う。そしてまた翌日は同じ事を繰り返す。ナップ達は様々な相手と戦った。剣、槍、斧、弓、銃、鞭、棍棒、鎖鎌、魔法使い、獣人、鬼族、エルフ族。一つとして楽な戦いは無かったが、全ての戦いが二人を少しずつ成長させた。
ゴディバドフは毎日のように二人の昼の稽古に顔を出し、アバウトな助言や稽古の相手をした。どうやら彼は中々の暇人らしい。
ある日、ナップはフロナディアの腕にできた刀傷を見て言った。
「嫁入り前の大切な体に傷が……申し訳ありません。私があの時もっとうまく立ち回っていれば……」
フロナディアはニコリと笑って返す。
「ナップ様が貰って下さるから構いませんわ」
その言葉にナップは顔を赤らめて慌てた。
「フロナディア様! ですからそういう冗談はおやめください」
しかし、その顔はまんざらでも無かった。
修行と実戦の日々を重ね、会って日の浅い二人の絆も強くなっていった。
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