一方リング上では

 マニラ達が関係者席で話をしていた頃。リングの上でもカリンがムチャに声をかけていた。

「あんた、変則的だけど、その太刀筋と感情術。心神流だね?」

 ムチャは少し考えて答えた。

「まぁ、師匠の流派はそうだ」

 カリンは納得したように頷く。

「やっぱりね。寺院で修行したのかい? それともどこかの道場?」

 ムチャはまた少し考えて答える。

「そんなちゃんとした所で習ったわけじゃないよ。師匠と旅をしながら教えて貰った。後は我流と実戦だ」

「なるほどね、お堅い心神流の剣士にしてはトリッキーな戦い方をすると思ったよ」

 そう、ムチャの剣技は幼い頃よりのケンセイとの旅と、トロンとの旅の中で磨かれたものだ。そこには心と精神を鍛えるなどの道場のお題目は無く、生きるため、自らの思いや考えや目的のためだけに振るわれる剣である。それゆえに精神状態や思考が剣に直結し、荒々しく、トリッキーで、より実践的でもあると言える。しかもムチャの場合は師匠が良い。長い旅の中で日常的に繰り返し行われる遊びも交えた稽古の中で、基本はしっかりとできていた。それが今のムチャの強さを支えている。

「私も心神流のめちゃくちゃに強い剣士を知ってるよ。感情術の使い方は似てもつかないけど、剣の技はあんたに良く似ている」

「へぇ、その剣士と戦ったのか?」

「戦うも何も無いよ。その人は私の師匠だからね」

「じゃあ、あんたも心神流なのか?」

「まぁ、あんたと同じでほとんど我流だけどね。感情術も下手くそで殆ど身につかなかったし」

 そう言ったカリンの体からゆらりと赤いオーラが立ち上る。

「なんかあんたと俺は似てるな。俺も感情術は苦手なんだ」

 今度はムチャの体からゆらりと青いオーラが立ち上る。そしてムチャはどことなく哀しげな表情となった。

「さぁて、子供相手に悪いけど、少し本気を出そうか」

「今まで手を抜いてたとか言うなよ」

「ふふっ、抜くのは旦那の……じゃなくて、あんた、 行くよ!」

 カリンはまたまたイワナの隣で余計な事を口走りそうになり慌てて口をつぐむ。


「了解。いやー、うちの女房が話し込んじゃって悪いね」

 イワナが杖に魔力を込めた。杖がバチバチと帯電し、火花を放つ。

「こちらこそ、相方が奥さん押し倒してすいません」

 トロンも杖に魔力を込める。杖を淡い光が包んだ。

 一瞬の静寂の後、前衛の二人が同時に叫んだ。


「怒の槍……憤怒槍ふんぬそう!!」

「哀の剣……悲連ひれん!!」


 ムチャとカリンは同時に地を蹴り駆け出す。

 そしてリングの中心で二人は刃を交えぶつかり合った。


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