二回戦
「さぁ、やって参りました! アレル闘技場、週に一度のタッグマッチバトル」
本日もアレル闘技場は大盛況である。アレルの街の人々は血を見る事やギャンブルが特別好きという訳ではないのだが、身近にあり手軽で見応えのある娯楽として、闘技場へは老若男女問わずあしげく通っているのであった。それもこれも、試合の残虐性を軽減し、更に闘技者のスター性を重視して、女性や子供でも楽しめる闘技場のイメージを作り出したマニラの手腕のおかげなのだ。
「んふふ、今日のカードは面白いわよ。なんてったってどちらも期待のルーキーだもの」
関係者席に座るマニラの目がギラリと光った。
一方控え室では。
「ダメ、チャンプ……これ以上戦ってはあなたは死んでしまうわ」
「いいんだ、それでも。俺の事を沢山の観客達が待っているんだ」
「バカ! チャンプのバカ!」
「あぁ、俺は大馬鹿さ、こんな不器用な生き方しかできねぇんだからな」
「あなたが死んだら私は……私は……」
「俺が死んだら、俺の事は忘れて幸せになってくれ。所詮俺はお前の上を飛んで行っただけの一羽のカモメだったのさ」
「そんな事、できる訳ないじゃない……私のお腹には、あなたの子供がいるのよ!」
「なんだって!?」
バンッ!
控え室のドアが勢い良く開いた。
「お前らは絶対そういう寸劇しなきゃいけないのか!?」
そこには一回戦の時と同じ係員が立っていた。
「まぁ、俺達なりのウォームアップってとこよ。セコンドは頼んだぜ、おやっさん」
「誰がおやっさんだ! 俺を巻き込むな。そろそろ出番だぞ」
「「へい!」」
二人は立ち上がり、薄暗い通路を歩きながらリングへと向かう。リングへと向かう途中、試合を終えたらしいゴドラとソドルにすれ違った。どうやら今日は勝ったらしく、ゴドラは二人にグッと親指を立てた。
「さぁ、それでは本日の二回戦を行います! 闘技者達の入場です! 青の門、先週華々しくデビューを飾った期待の新人! 「最強のお笑いコンビ」ムチャとトロンの登場です!」
ムチャとトロンは観客に手を振りながらリングへと上がる。心なしか一回戦の時より拍手の数が多いようだ。
トロンちゃーん!
ムチャー!
トロンちゃんこっち見てー!
二人が歓声を受けながらリング中央へ歩み寄ると、司会者が対戦相手を呼んだ。
「続きまして、赤の門より対戦相手の入場です! 赤の門、試合回数は三回と少ないものの、ここまで無敗記録を守り続けているこちらも期待のルーキー! 「異次元の傀儡師」ポロロとギャロの登場です!」
「「え?」」
ムチャとトロンは司会者が口にした、先日聞いたばかりの名に耳を疑った。
「この二人、いや、一人と一体の組み合わせは、本来ならギャロ選手は武器、もしくは戦闘用の道具として認められるために、もう一人闘技者をリングへと上げることができるのですが、ポロロ選手の「ギャロは道具じゃなくて、僕の相棒だから」という言葉によりタッグとして扱わせていただきます!」
うおー!
ポロロー!
人形フェチー!
そして、ムチャとトロン以上の歓声を受けながら二人の正面へと現れた人物は、間違いなくポロロとギャロであった。
「え? なんで?」
ムチャがポカンとしながら聞くと、ギャロはけけけと笑った。
「俺達は考えたのさ、山程のお宝以上の価値がある物をな。そして答えを出した。それは……」
「栄光。これはいくらお金を積んでも得られるものじゃないからね。あちこちの闘技場で勝ち抜いて、沢山の栄光を手に入れたらきっとギャロを元に戻せると思ってさ」
「……なるほどぉ」
ムチャとトロンはまだ信じられないといった顔をしている。
「なんか、騙したみたいでゴメンね……二人が闘技者だって、最初は全然気付かなかったんだ」
ポロロが困ったような顔をすると、そこでようやくムチャはシャンとした。
「ま、まぁ、いいって事よ。それより、本当に一人でいいのか?」
「一人じゃないよ。僕にはギャロがいるから……それに」
ポロロの困り顔が一瞬で闘技者の顔に変わる。
「僕らは強いからね」
その時、ボディチェックとお決まりのルール説明が終わり、司会者が声を張り上げる。
「それでは、試合開始です!」
次の瞬間、ムチャの体が後方へと吹っ飛んだ。
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