というお話

「というお話だ」

 ギャロという名の人形は、語り終えて一息ついた。

 体育座りをして話を聞いていたムチャとトロンは腑に落ちない表情を浮かべている。

「全然めでたくないじゃん」

「まぁ、俺からすれば悲劇だな」

「そもそもその盗賊がギャロさんで少年がポロロ君なら、そんなにむかーしむかしじゃないよね」

「それはお約束って奴だ」


 二人は握り締めていた硬貨をワンランク下げると、少年の投げ銭入れに入れた。


「ポロロはギャロが人間に戻る手伝いをしてるのか?」

「うん」

 ポロロはコクリと頷く。

「お前いい奴だなぁ」

「でも、それならこんなお金の稼ぎ方しなくても、ギャロが元々持っていた財宝で人を雇って、すっごい価値の物を探した方が良くないかな?」

 それを聞いてギャロは苦〜い顔をした。人形とはいえ顔周りのパーツはよく作り込まれていて、むしろ人間より表情の変化がわかりやすい。

「そりゃあな。そう思って一回こいつにアジトの場所を教えて行ったんだよ。そしたらアジトのお宝部屋の中身がぜーんぶ空っぽになってやがった。絶対あのクソ魔女が持っていきやがったんだ!」

「魔女ひでぇな」

「だろ!? だから人間に戻ったら絶対にあのクソ魔女に復讐してやるんだ」

「いやぁ、やめとけよ……また捕まったら今度は何にされるかわからないぞ」

「もっとかわいい女の子の人形にされちゃうかも」

「いや、トゲたぬきのヌイグルミにされるかもしれないぞ」

 ムチャとトロンはぷぷぷと笑った。

「笑こっちゃねぇ! この体のせいで酒も飲めないし女も抱けねぇんだぞ!」

「そりゃあ、自業自得だとおもうけど」

「でも、どうしてポロロ君はギャロの手伝いをしてるの?」

 トロンが黙っているポロロに声をかける。

 すると、ポロロはまた困ったような顔をした。

「こいつの話は銭が取れるような話じゃねぇからやめときな」

 二人は大人しく頷いた。

「それより、お前らは何なんだ? 剣背負って杖持って、闘技者ごっこか?」

「うーん、まぁそうだな。闘技者「ごっこ」だ」

「そうそう、ごっこごっこ」

 トロンはうんうんと頷く。

「本業はお笑い芸人なんだよ。今度そこにある闘技場でライブするだから、まだこの街にいるなら観に来てくれよ」

「そうなの? 是非行かせてもらうよ。いいよねギャロ?」

「お前が行くなら俺も行くしかねぇだろ」

「すげぇライブにするから楽しみにしといてくれよな! よーし、なんだか燃えてきたぞ! 行くぞトロン!」


 ムチャはそう言うと、トロンと共に立ち上がり、ネタの練習をするために去って行った。


「闘技者ごっこで芸人ねぇ」

「ギャロ、もしかして……」

「あぁ、次の相手はあいつらか」


 その時、一陣の風が吹き、芝生の上に落ちていた木の葉が舞い上がる。

 ポロロは指を一本動かした。


 スパッ


 ギャロの左腕が素早く動き、空中の木の葉が真っ二つになる。


「やだなぁ……」


 ポロロは困ったような顔をして、二人の背中を見送った。

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