対決、ブレイクシア城7

「プレグー! 生きてる!?」

 キーラを倒したプレグの元に、ニパが駆け寄ってきた。

「あんたも無事だったのね、良かった……」

 元気そうなニパの様子を見て、プレグは心底ほっとした。危なくなったら逃げるようにと言ってはいたのだが、キーラとの戦闘中もニパの事がずっと気になっていたのだ。

「プレグこそ怪我してない?」

「私は満身創痍よ」

 プレグもボロボロであったが、よく見るとニパの体もまた傷だらけで、あちこち腫れたり出血したりしている。それでもニパは、プレグが無事でいた事を喜びニコリと笑った。プレグはそんなニパの頭を優しく撫でた。

「で、ゴブリン達は?」

 プレグは辺りを見渡し硬直した。二人の周りをいつの間にかゴブリン達が取り囲んでいたのだ。

「嘘でしょ!? あんた何やってたのよ!」

 プレグが慌てて身構えると、ニパが狼のような声で吠えた。

「ガウゥゥゥ!!」

 すると、ゴブリン達はズザザザと後ずさり、跪いて遠巻きにニパをじっと見つめる。

「あんた本当に何やってたの?」

「なんか……よく分からない」

 ゴブリンは基本的に獰猛な魔物であるが、ある程度の知能を持っており、強者と認めた者に付き従う習性がある。ニパはゴブリン達との激しい戦闘の中で偶然にもゴブリンのリーダーを倒し、ゴブリン達に新たなリーダーとして認められてしまったのであった。それは偶然というだけではなく、ニパの体に流れるウルフマンの血が、本能的に敵のリーダーを狙ったせいでもある。本人はよく分かっていないが。

 ニパはこの戦いの中で、色気ではなく野生に目覚めてしまったようだ。

「あんたちょっと野生じみてきたんじゃない?」

「やめてよー、地味に気にしてるんだから」

 ニパはぽりぽりと頬を掻いたが、その仕草もちょっとだけ獣っぽかった。


 その時である。

「ゴブリン共! そこの娘達から離れろ!」

 少し離れた所にある大岩の上から、二枚目顔の男が叫んだ。プレグとニパ、そしてゴブリン達は一斉にそちらを振り返る。

「喜術……乱走」

 男は足から黄色いオーラを放ちながら、驚異的な速さでゴブリンの一体に駆け寄ると、素早く剣を抜いて斬りつけようとした。

「ちょっと待ったー!」

 しかしその男は、男とゴブリンの間に割って入ったニパの怪力で突き飛ばされ、荒野に転がる。

「お嬢さん……何をするのですか! って、貴様も魔物か!?」

 男は半獣化しているニパを見て、ニパに剣を向けた。

「魔物って言うな!」

 そしてニパの投げた石ころが額に直撃し、痛みのあまり大地を転げ回った。

「誰よこいつ?」

 プレグはのたうち回る男に近づき、顔を覗き込む。

 その二枚目顔の男は、あのナップであった。

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