対決、ブレイクシア城5

「ぐ……くくく……あっはっはっは!!」

 強制爆笑陣に囲まれたブレイクシアは、斧槍を取り落とし笑い始めた。

「な、なんだこれはっはっはっは!!!!」

 ブレイクシアは腹を抱えて爆笑している。それを見たムチャとトロンはホッと一息ついた。

「お望み通り楽しませてやるよ! 喜流し!」

 ムチャはダメ押しにと更に喜の感情術を魔法陣に流し込む。

「こんな……こんなふざけた技でっひゃっひゃっひゃ!!」

 ブレイクシアは鼻水と涙を垂れ流しながら床に膝をつく。その顔はキーラが見たら百年の恋も冷めそうな顔であった。

「さて、これからどうするよ?」

「とりあえず気絶するまで笑わせとこう」

「だな、真っ向から戦っても勝てそうにないし」

 ブレイクシアの武力と魔力は、ムチャとトロンの二人を持ってしてもそう言わしめるほどの強さである。正面切って戦えば剣も魔法も効かず、気合いだけで相手を吹き飛ばす、一騎当千の武人ブレイクシア。しかし、二人の「他人を笑わせたい」という意思で編み出された必殺、否、必笑技が、ブレイクシアをかつてない危機に陥れていたのだ。

「ゆ……許さぬぞ……人間め!!」

 ブレイクシアは唇を噛みきり、痛みにより笑いを抑えると、手に短い槍を生み出し自らの太腿に深々と突き刺した。

「ぐうううっ!!」

 さらなる痛みにより、ブレイクシアは自我を大幅に取り戻した。そして全身に黒いオーラを漲らせる。

「まずい、離れて」

 トロンの合図で二人は後ろへ跳んだ。

「ふんぬ!!」

 その瞬間、ブレイクシアが全力で床に拳を叩きつける。ブレイクシアの一撃を受けた床は、まるで爆弾でも炸裂したかのように轟音を立てて砕けた。それにより、床に描かれた魔法陣もバラバラになってしまう。

「よくも私に恥をかかせてくれたな……」

 ブレイクシアはゆらりと立ち上がると、グッと拳を握りしめ、凄まじい速さでムチャに向かい跳んだ。

「速……!!」

 ムチャはそのあまりの速さに反応できず、ブレイクシアの拳をまともに顔面に喰らう。そして顔面から血を撒き散らして吹き飛んだ後、ひび割れた床に体を叩きつけられて呻いた。

「業火よ!」

 それを見たトロンは慌ててブレイクシアに火球を放ったが、ブレイクシアはそれをいとも容易くマントで払い除ける。

「邪魔をする……なぁーーー!!!!」

 咆哮するブレイクシアの口から、衝撃波の塊が打ち出された。トロンは障壁を張る暇もなく、衝撃波の塊を受けて後方に吹き飛ぶ。そして背後にあった壁に強かに後頭部を打ち付けた。トロンは頭から血を流しながらも、何とか立ち上がろうとする。しかし、頭を打ったせいか体はいうことを聞かず立ち上がれない。ブレイクシアが、トロンに向かいゆっくりと歩いてくる。するとトロンの目に、赤いオーラを身に纏いながらブレイクシアの前に立ちはだかるムチャの背中が映った。


「トロンはやらせない」


 そのムチャの声を聞いて、トロンは気を失った。

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