対決、ブレイクシア城2
城門を抜けたムチャとトロンは城の中を駆け抜けた。城の中には多くの魔物や鬼族の兵士がいたが、ブレイクシアの命なのか二人に襲いかかる事はなく、着々と戦の用意を進めているようであった。
二人は階段を上がり、ホールを抜け、また階段を上り、塔を上る、そして階段を下り、渡り廊下を抜け、広場を横断する。更に階段を上り、廊下を駆け抜け、階段を下り、地下牢を駆け抜け、階段を上り、いつの間にか最初に通ったホールに出た。
「……あの、すみません。ブレイクシアはどこにいますか?」
ムチャは少し恥ずかしかったが、ズラリと整列しているガーゴイルの一体に恐る恐る聞いた。
「グゲギグギガ? ギギギ、ゴゴゴ、ギゲギ」
ガーゴイルはあれこれジェスチャーをして教えてくれたが、ムチャとトロンには何を言っているのかさっぱりわからなかった。
「トロン、わかるか?」
「ううん」
二人は再び駆け出した。そして塔へと向かう階段を上ろうとしたとき。
バァン!
ホールの奥にある扉が勢い良く開かれた。
「早く来んかぁ!!!!!!」
そこには角を赤くしたブレイクシアが立っていた。
「あ、ブレイクシアだ」
「ホントだ」
「ホントだ……じゃない! こう言う時は真っ直ぐ進むものだろうが!」
「いや、なんか高いとこにいるのかと思って」
「高飛車そうだし」
ムチャとトロンはぽりぽりとこめかみを掻いた。
「まぁ良い、着いてこい」
そう言うとブレイクシアは扉に入り、一足跳びで部屋の奥にある玉座へと座った。
ムチャとトロンもブレイクシアに続いて扉に入る。
そこは先ほどいたホールよりも広い、謁見の間であった。寂れてはいるが、部屋の中にはあちこちに大掛かりな装飾が施されており、荘厳な雰囲気が漂っている。
「良く来てくれたな。我はこれから多くの人間どもを殺戮する予定だが、貴様らはその栄えある第一号だ」
玉座にて、優雅に足を組んだブレイクシアが言った。
「お招きいただきありがとうございます。我々は今まで多くのお客様を笑わせて来ましたが、あなたは栄えある一万人目でございます」
ムチャは優雅に礼をして返した。
「そんなに笑わせたかな?」
「数えてないけど、それくらい笑わせただろ。多分」
ムチャはどんぶり勘定が得意であった。
「随分と余裕だな芸人よ。先日半殺しにされたのを忘れたか?」
「今日は相方がいるしな。俺、笑いも戦いも相方がいないとダメなんだよ」
「ふん、女に背中を預けるとは情けない男だ」
「お前の参謀も女だろうが!」
そう言われてブレイクシアはふと考えた。
「キーラは右腕だから背中を預けているわけではないわ!」
「お前も屁理屈か! それならトロンは俺の半身だ!」
「右? 左?」
「そこはどっちでもいいだろ……」
「本当にどちらでも良いわ。さて、お喋りも良いが、王国軍が来る前に終わらせねばなるまい。貴様らの体にも風穴を開けてやろう。あのミノタウルスの様にな」
それを聞いてムチャはブレイクシアを睨みつけた。
「お前、何でミノさんにあんな事したんだ。同じ魔物同士だろ?」
「同じ魔物だと? ふん、俺は貴様ら人間のその傲慢な枠組みが気に食わんのだ。人間以外は皆動物か魔物。数の力で我々知性ある魔物まで淘汰しおって。たまたま女神の寵愛を受けただけの下等な種族が調子に乗るな」
「それはミノさんと関係ないだろう」
「人間に擦り寄る魔物など反吐が出るわ。ミノタウルス族もかつて人間共に住処を追われた事を忘れ、人間共とベタベタしおって。そんな裏切り者は生かしておくに値せん」
「そんな人間ばかりじゃない。少なくとも、お前が襲ったクフーク村の人達は違う」
「俺も人間共に大人しく辺境に追いやられた鬼族とは違う。俺が魔物を率いて貴様らの傲慢を正してやるのだ。俺が間違っていると言うのならかかって来い、芸人よ」
ブレイクシアは二人に手の平を向けた。
「どうやら大人しくネタを見てくれないみたいだな」
「みたいだね」
ムチャは剣を抜き、トロンは杖を構える。
「貴様らの悲鳴で俺を笑わせてみよ!!」
ブレイクシアの手から魔法の槍が放たれた。
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