強襲!トカゲ軍団
ムチャとトロンが表に出ると、村の入り口の方から大きな土煙が上がっていた。村人達は村の反対側に次々と逃げて行く。
「何!? 魔物ですって!?」
二人の後からペノが出てきた。
「みたいだな」
「ペノさん、店の中の人達と一緒に安全な所に逃げて」
「あなた達は?」
「大丈夫。こういうの慣れてるから!」
引き留めようとするペノを尻目に二人は土煙が上がっている方向へ駆け出した。
二人が村の門までたどり着くと、そこではジャイアントキングヨロイトカゲ達が暴れ回っていた。
「あいつら、俺達を襲ってきたやつらか」
「多分」
二人は逃げ惑う人々を躱しながらヨロイトカゲ達の中に飛び込んだ。
「ショータイムだ!」
ムチャが剣を抜き、ヨロイトカゲの一体に斬りかかる。ヨロイトカゲの甲皮は名前通りヨロイのように硬い。幾層にも重なった甲皮は、並の斬撃など容易く弾く。ムチャは狙いを定めて甲皮と甲皮の隙間を正確に斬りつけた。
「やっちゃいましょうか」
トロンはムチャがヨロイトカゲ達を引きつけている間に魔力を貯め、これ以上村に侵攻させないために魔法の壁を張った。
「いやーん、私ヨロイトカゲに変な目で見られてるの」
トロンは地の魔法を使い地面を隆起させ、ムチャが戦いやすいように足場を作った。
「それはいけませんね!」
ムチャは足場を飛び回り、ヨロイトカゲ達の脚を次々と斬りつけてゆく。脚を斬られたトカゲ達は、自重を支えきれずに次々と転倒した。
「もしかしたらヨロイトカゲじゃないのかも」
ヨロイトカゲの甲皮は魔法への耐性があるため、トロンはムチャのサポートに専念する。トロンは屋根の上まで跳び、雷の魔法でヨロイトカゲの目を狙う。
「じゃあなんなんですか!?」
ムチャは一際大きなヨロイトカゲの腹の下に滑り込み、剣を一閃させた。甲皮に覆われていない腹を斬られたヨロイトカゲは鮮血を撒き散らし倒れ臥す。
「あれはヨロイトカゲじゃなくてエロイトカゲだ」
二人の猛攻の前にヨロイトカゲ達は次々と倒れてゆく。
「そんなトカゲ初めて聞いたよ!」
倒れたトカゲ達に飛び乗り、ムチャは次々とどめを刺す。
「ボロボロのトカゲは?」
「モロイトカゲ!」
「日に焼けちゃったトカゲは?」
「クロイトカゲ!」
「最近アンニュイな気分なの……」
「えーと……えーと……」
気がつくとトカゲ達は一目散に逃げ出していた。
「正解はウレイトカゲでした」
トロンは杖を振り魔力の壁を消した。
「わかりづらいよ!」
ムチャは剣の血を払い、鞘に収める。
「どうも」
「「ありがとうございました」」
二人が一礼をすると、逃げ惑っていた村人達は胸を撫で下ろした。
「あんた達、えらく強いな!」
村人達が二人の周りに群がる。
「旅芸人じゃなかったのか?」
その中には昨日洞窟の入り口にいた人も混ざっていた。
「まぁまぁ、たまたま戦えるお笑いコンビってだけだよ」
「本業は旅芸人」
「……逆の方が向いてないか?」
「それを言っちゃおしまいよ」
「だよね」
ムチャとトロンは渋〜い顔をした。
「いやぁ、あんたらがいなかったらえらいことになったよ」
「しかし……こんな所にジャイアントキングヨロイトカゲが出るなんてな……しかも群れで……」
「魔王が健在だった頃もあんな大物に村が襲われた事はなかったよな」
ムチャはトロンの耳に口を寄せた。
(もしかしてあいつら俺達を追って来たのかも……)
(それは……黙っとこう)
ドゴォン
その時、村の反対側でも破壊音が聞こえた。そしてそちらからはさっきよりも大きな土煙がもうもうと立ち上っている。土煙の隙間からは、先程倒したヨロイトカゲ達よりも数倍大きなトカゲの姿が見えた。
「あれは……ジャイアントキングヨロイトカゲの雌だ!!」
「ペノさん達が危ない」
二人は同時に駆け出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます