幕間

「最近魔物と遭遇する事が多くないか?」

 ムチャは全速力で走りながら言った。

「多いよねぇ」

 トロンも全速力で走りながら言った。


 二人の背後には、体長五メートルを超えるジャイアントキングヨロイトカゲの群れが迫っていた。二人がベナニカの街を出てから一週間。魔物に追いかけられるのはこれで三度目である。


「魔王が倒されてからは魔物もある程度大人しくなったはずなのにね」

「うーん……そうなんだよなぁ。ケンセイが魔王は仲間達と倒したって言ってたし」

「実は魔王は生きていた。とか?」

「いやいや、トロンは知らないだろうけど、ケンセイってめちゃめちゃ強いんだぜ? 本気のケンセイとまともに戦って生きている奴なんて想像出来ないぞ」

「じゃあ、たまたまかなぁ」

「たまたまだろ」

 二人はチラリと背後を見た。

「しかしなぁ、こう数が多いとキリが無いよな」

「うん。……炎よ」

 トロンが背後に火球を放つと、先頭を走っている一匹に命中し後方に吹っ飛ぶ。しかしすぐに起き上がり、ドタドタと追いかけてきた。

「硬い……」

「よし、どっかに隠れてやり過ごすぞ!」

 ムチャが剣を抜き、大きく跳び上がる。そして力任せに剣を大地に叩きつけると、大きな土煙が巻き起こる。

 トカゲ達の視界が遮られた隙を突いて、トロンはムチャと共に杖に跨り、飛空の呪文を唱え上空へと飛んだ。


「どこに隠れようか?」

 二人を見失ったトカゲ達は、二人を探して地面をドタバタと走り回っている。上空でふわふわと浮いていては、見つかるのは時間の問題だった。

「うーん……お、あそこに洞窟があるぞ」

 ムチャが指差した先には、山の麓にぽっかりと口を開けている大きな洞窟があった。

「モンスターの巣じゃないよね」

「まぁ、その時はその時だろ」


 二人を乗せた杖は、洞窟へ向かい真っ直ぐに飛んだ。そこに何が待ち受けているとも知らずに。

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