ニーナの真実
「まさかこんな所で私の【坊っちゃま好き好き大作戦】が断念するなんて!!」
ニーナが叫び、そして場の空気が凍った。
「ニーナさん、今何と?」
「【坊っちゃま好き好き大作戦】よ【坊っちゃま好き好き大作戦】!!」
ニーナは完全にヤケになっていた。
「ちょっと詳しく聞かせてもらえますか?」
ニーナは涙目でトロンを睨んだ。
「そのまんまよ! 坊っちゃまを洗脳して、徐々に大人になっていく坊っちゃまと少しずつラブラブな関係を築いていって、やがては結婚するっていう作戦よ!」
「そしてニコルの受け継いだ財産を独り占めすると」
「違います! 私はただ坊っちゃまとラブラブな関係になりたかっただけなんです!」
ムチャとトロンはドン引きしていた。
「あの、もしかしてニコルの両親とか殺してません?」
トロンはおずおずと聞いた。
「そんな事するはずないでしょう!? そんな事したら坊っちゃまが悲しむじゃない!!」
(洗脳はいいのか……)
その場の全員が思ったが、口には出さなかった。
「まさか普通の事故だったのか? じゃあ、御者の死体はどこに消えたんだ?」
「知らないわよ! 動物かゴブリンが持って行ったんでしょ! あーあ、あんたらのせいで全部台無しよ! 衛兵でも何でも呼びなさいよ!」
ニーナは床にどっかりと胡座をかいた。
「トロン、どうする?」
「うーん……もしかしたら嘘をついてるかもしれない」
「じゃあ……あれやるか」
トロンの杖から無数の羽箒が召喚された。
「ななな……何よそれ?」
後ずさるニーナをしゅるしゅると魔法の縄が縛る。
一時間後。
「あ……あは……はぁ……あはっ………うひっ…………」
そこには口からよだれと鼻水を垂らし痙攣するニーナの姿があった。
「どうやら嘘はついてないみたい」
「じゃあ、ニーナさんは本当にただの少年好きだったって事か。ちょっとショックだな……」
ムチャはがっくりとうなだれた。
「あの……坊っちゃまにかけられた洗脳はどうなるんでしょうか?」
「それは数日したら解けますよ。魔法で解除するよりは自然に解けた方が脳にも精神にも負担が少ないです。ニーナさんの魔力も弱かったみたいですしね」
「そうですか」
リベラはホッとした表情を見せた。
ここ数日で、リベラがこんなに穏やかな表情を見せたのは初めてであった。
「リベラさん。俺達リベラさんに謝らなきゃいけない事があるんだ」
ムチャはここ数日、リベラを疑い尾行していた事を告げた。そして二人は深々と頭を下げる。
「「疑って本当にすいませんでした」」
「ほら、ニコルも」
ムチャはニコルの肩をポンと叩いた。
「ごめんなさい」
ニコルが頭を下げると、リベラはニコルの頭を撫でた。
「いいんですよ坊っちゃま。わかってくだされば」
「リベラ……」
しかし、ニコルの表情は暗かった。両親の仇と思っていた人物はただのメイドで、自分が好意を抱いていた人物が自分を洗脳しようとしていた危ない人だったのだから無理もない。
穏やかだったリベラの顔も、ニコルの顔を見て暗くなる。
その時、ムチャの脳裏にニコルを笑顔にする作戦が思いついた。
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