コンビ探偵

 翌日、二人はリベラの後をこっそりつけていた。

 リベラが何か不審な動きをしないか捜査するためだ。


「昼過ぎ、追跡対象は市場にてニンジンとタマネギを購入」

「あ、ジャガイモも買いました」

「この買い物のチョイスから判断すると……」

「今夜はカレーですね」

「いや、肉じゃがの可能性も捨てきれない」

「確かに」


 このなんちゃって探偵達からはポンコツの匂いがプンプンした。

「こんな事で何かわかるのかな?」

「知らん。けどもしかしたら何か怪しい動きをするかもしれないだろ」

「私はリベラさんは悪い人じゃないと思うけど……」

 そう言いつつ二人はリベラの後を追う。

「む、対象が本屋に入るぞ」

 二人はリベラが本屋から出るのを待ち、本屋に突入した。

「いらっしゃい」

 ムチャはカウンターに座っている店主に声をかける。

「今出て行ったメイドは何の本を買っていった?」

「へ?」

「今出て行ったメイドは何の本を買っていったか聞いている」

「あー、リベラさんかい。この本と同じものを買っていったよ」

 店主が差し出した本の表紙にはこう書いてあった。

【子供の心を開く100の方法】

「んー……もっとこう、暗殺の仕方とかそういう物騒な本じゃなかった?」

 店主は首を横に振る。

「いや、確かにこの本だったよ」

 ムチャはすごすごと本屋を後にした。

「ムチャ、早く、行っちゃうよ」

 二人はさらにリベラを追跡する。

「トロン! 見ろ!」

 次にリベラが入った店の看板にはこう書かれていた。

【ベナニカ刃物店】

「これは怪しいぞ」

 二人は店の入り口から中の様子をこっそり伺う。

 そしてそこで二人が見たものは……

「……」

「……包丁を研いで貰ってるね」

 店員に包丁を研いでもらうリベラの姿であった。

 包丁を研いで貰ったリベラは包丁を布で包むと、特におかしな様子もなく刃物店から出てきた。

「やっぱりリベラさんはそんな人じゃないんだよ」

「いや、わからんぞ。ニコルの心を開いて、あのよく研がれた包丁でブスリとやるのかもしれないだろ」

「無いと思うけどなぁ……」


 その日は結局、リベラに不審な点は見受けられなかった。


 そして夕飯はポトフであった。

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