ニコルの部屋にて

 それから二日程、二人はリベラを追跡してみたが、結局怪しい所は何もなかった。

 捜査の報告をしに、ニコルの部屋を二人は訪れた。


 コンコン


「ニコル君、遊びましょ」

 これは二人がニコルの部屋に出入りするところを、リベラに見られても怪しまれないようにするための合言葉のようなものだ。

 しかし、部屋の中からは何も反応が無い。

「寝てるのか?」

「さぁ」

 二人が扉を開けようとすると、内側から扉が開きニーナが出てきた。

「あら、二人とも坊っちゃまに何か御用?」

 予想外の人物が部屋から出てきた事に二人は驚いた。

「あ、いや、ニコルの相手をしようと思ってさ」

「まぁ、二人とも本当に坊っちゃまのお友達になってくれたのね。でも残念ね、今ぐっすりお昼寝してるわ」

「ニーナさんはニコルの部屋で何をしていたの?」

 トロンが聞いた。

「私はちょっとお部屋のお掃除をね。じゃあ、失礼するわね」

 そう言うとニーナは去って行った。

 二人はニーナが去るのを見届けてから、ニコルの部屋に入る。

 ベッドではニーナが言った通り、ニコルが寝息を立てていた。

「こうしていると普通の子供だな」

 ムチャがトロンを見ると、トロンは何か訝しげな顔をしている。

「どうしたトロン?」

 ムチャが聞くと、トロンは少し考えて口を開いた。

「魔法を使った気配がある」

「魔法? この部屋で?」

「うん、多分ニーナさんが何らかの魔法を使ったんだと思う」

「何でニーナさんが魔法なんか。掃除の魔法か?」

「わからない。でも……何か嫌な予感がする」

 トロンは杖を構え魔力を込めた。すると、部屋の中にニーナの姿が現れた。

「これ、ゴーレムの村で使った魔法か?」

「うん。この部屋の記憶を再生した」

 魔法により現れた幻のニーナは、ニコルの枕元に近付くと、ニコルの額に自分の額を当てた。そして何やら呪文を唱え始める。トロンはそれを神妙な顔で見つめている。

「私達は探る相手を間違えていた。私達が探らなきゃいけなかったのは」

 トロンは魔力を収めた。


「ニーナさんだった」

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