幕間

「おっさんありがとう!」

「おう! お二人さん元気でな!」


 コペンに手配された馬車に乗った二人は、あれから一週間ほど馬車に乗り、ベナニカという大きな街で降りた。そこはこれまでに訪れた村や町よりも栄えていて、レンガが敷き詰められた道には人が溢れていた。


「うはー! デカい街だなー!」

「お客さんも沢山集まりそうだね」

「とりあえず飯でも食うか」

「うん」


 二人はコペンから受け取った報酬で懐が潤っていたので、何か温かいものを食べようと食堂に入った。


「うーん……トロン何にする?」

「私はハンバーグにする」

「うーん……俺はどうするかな」

「お腹空いたねぇ」

「うーん……」

「ムチャは何にするの?」

「ちょっと待ってくれ」

「オオトカゲの丸焼きがオススメだって」

「うーん……オオトカゲって気分じゃないな」

「うん。ムチャもハンバーグにしたら」

「うーん……ハンバーグはアリだな」

「じゃあ、ハンバーグ二つでいい?」

「いや待てよ、このキングクラブ雑炊もありじゃないか?」

「いいかもね」

「うーん……」

「ムチャ悩みすぎ」

「待ってくれ、今ハンバーグと雑炊の二択だから」

「チッ……チッ……チッ……チッ……」

「ちょっと時計の真似やめろよ」

「だってムチャ遅いよ」

「焦ると余計悩むだろ」

「ごめん」

「あ、このコーンコロッケもいいな」

「二択って言ったのに」

「ハンバーグを除外して二択だ」

「お腹空いた……」

「わかってるよ。久しぶりに温かい料理が食えるんだから悩んじゃうんだよな」

「うん、気持ちはわかる」

「その割にハンバーグ即決だったよな」

「いいから決めて」

「うーん……」

「私は雑炊がいいと思うな」

「え? トロン雑炊に変えるか?」

「ムチャが食べる奴」

「あー……今コロッケとスパゲティで悩んでるんだよ」

「……すいません、ハンバーグ一つと超辛ヒートエンドスプラッシュキングピリピリファイヤー鳥の煮物一つ」

「おい!!」


 数十分後、二人は会計を済まし食堂を出た。

「案外うまかったなー、ファイヤー鳥の煮物」

「ムチャ……唇が四倍くらいになってる……」

 ゲテモノ喰いに慣れているムチャの舌の方は煮物の辛さを難なく受け入れたが、唇の方は完全に被害を被っていた。もう歩く度にぷるっぷるしていた。


「さーて、次のショーはどうするかな」


 そんな事を言いながら歩いていると、一軒の大きな屋敷の前に一枚の張り紙が貼られていた。


【専属芸人募集。期間−当家の坊っちゃまを笑わせるまで。報酬弾みます。 オーディション有り】


「ふむ……面白そうだな」

「やってみる?」


 こうして、二人の次の仕事が決まった。

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