回想5

 新たな感情の巫女の戴冠の儀式が、間も無く始まろうとしている。少女は控室にて化粧を施されていた。


 あれからあの少年は私の前に現れなかった。

 でも、別に構わない。予定通り私はただ巫女になるだけなのだから。


 化粧を施した少女を侍女と護衛が控室に迎えに来た。少女は立ち上がり戴冠式のステージに向かう。


 巫女になれば神託を受ける事が出来るなんて本当だろうか?私は正直信じていない。ただ政治に都合よく利用されるだけだろう。感情を消せと言われるのも、何の疑問も抱かずにただ権力者達の傀儡になれという教育なのだろう。


 少女が会場に着くと、ズラリと並んだ権力者達、そして数えきれない信者達が会場に集まっていた。

空は青く晴れ渡り、まさに絶好の儀式日和という感じだ。


 私が巫女に選ばれたのは、ただ並外れた魔力があり、他の巫女候補達より感情術の扱いが上手かったから。それから、生まれてすぐに捨てられて、この寺院で生まれ育ったから。私ならば、巫女になっても他の巫女候補のようにその家族や家柄にする事も無いからであろう。


 少女はゆっくりと壇上に上がり、席に着く。

 神官がなにやら言っているが全く頭に入って来ない。


 正直巫女になるなんて嫌だ。でも私はここから逃げ出しても行くところも帰る親元もない。だから、私はただ言いなりになるしかないんだ。


 少女の前に巫女の証である冠が運ばれて来る。


 別に悪いように扱われる訳じゃない。ただぼーっと巫女様とやらを演じ続ければいいんだ。幸い感情の扱いには慣れてる。消す事だって造作もない。


 私は、巫女になるんだ。


 その時、戴冠式のステージに何者かが飛び降りて来た。


 バァン!!


 そこには、覆面をした一人の少年が立っていた。

 少年は全裸だった。

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