〜幕間〜
どこまでも続く街道を、ムチャとトロンの二人はおしゃべりを楽しみながらひたすら次の町を目指して歩いていた。
「やっぱりあるあるネタはモンスターあるあるがいいって!」
「もっと日常的なあるある方がお客にわかりやすいと思う」
「だーかーらー、あるあるネタはコアだからこそ面白いんだってば!」
「ムチャのあるあるはわかりづらいんだよ。なしなしだよ」
そんな掛け合いをしながら歩いていると、少し先に大きな旅団を見つけた。旅団の馬車の周りをトゲトゲとした毛を逆立てたオオカミ達が、唸り声をあげながら取り囲んでいる。旅団はどうやらハリオオカミの群れに襲われているようであった。
ムチャはそれを見て剣を抜いた。
「よし! 助けるぞトロン!」
「うん」
二人は駆け出すと、旅団を囲むハリオオカミの群れに飛び込んだ。
「オオカミって色っぽいよね」
トロンの雷撃がオオカミ達を痺れさせる。
「どこがだよ!」
ムチャの飛び蹴りで数匹のオオカミが吹っ飛んだ。
「うるふぅ〜ん。なんちゃって」
杖が地面を叩くと爆発が起こり、オオカミ達が巻き上げられる。
「気色悪いよ!」
剣が大地を割り、こりゃたまらんとハリオオカミ達は一斉に逃げ出した。
ムチャは剣を収めると、襲われていた旅団に駆け寄った。
「おい、大丈夫だったか?」
するとどこからか声が聞こえてきた。
「いやー、助かったでし」
ムチャは声の主を探すが見当たらない。
「ムチャ、下」
ムチャが下を見ると、そこには手のひらサイズの小さな人間がいた。
「小人!?」
「私はコペン幻想劇団の座長コペンでし、助けていただきありがとうでし」
そう言ってコペンと名乗る小人は頭を下げた。
旅団の荷馬車を見ると、確かに芝居の小道具のような物が積まれている。
「なに、いいって事よ。こういうのはお互い様だからな」
「旅の恥はかき捨て」
「使い方おかしいだろ!」
二人のやりとりを見てコペンは言った。
「お二人は冒険者でしか?」
「違う! 俺達は……」
「お笑いコンビ」
「お前が言うのかよ!」
それを聞いてコペンはニコリと笑う。
「お二人は芸人でしたか! 実はうちの劇団で前座の芸人を探していたのでし! よかったら次の町にいる間一緒にどうでしか?」
二人は考えた。
「前座かぁ……」
「ギャラは弾むでしよ」
二人はゴーレムの村を旅立つ際に、老人が旅立つ時の路銀にしてくれとゴールドを半分あげてしまっていたのだ。おかげで懐はとても寒い。
「ムチャ」
「トロン」
「「やろう」」
こうして二人は、次の町でコペンの一座と興行を共にすることになったのだ。しかし、二人は岩陰から覗く一対の目に気付いていなかった。
?「あいつら……ついに見つけたぞ」
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