〜番外編1〜ベタル村大食い大会
「さぁ! やって参りました! 毎年恒例ベタル村大食い大会! 今年は一体どの参加者が優勝するのか!?」
ベタルの村の広場では、毎年恒例の大食い大会が開催されていた。会場には出店があちこちに立ち並び、村の広場は見物人などで大いに賑わっている。
広場の特設ステージ上には二十名の参加者がズラリと並んでいた。参加者達の前には大きなホットドッグが山積みにされている。
「今年の優勝候補と言えばやはりこの人! ジャイアントブラック氏です! 彼はあらゆる町や村の大食い大会に参加し優勝を掻っ攫っていく、大食い会の中でも大物中の大物です!」
参加者の中でも一際大柄で顎がしゃくれている男が観客に手を振った。会場から大きな拍手が送られる。
「ちょっとインタビューしてみましょう! ブラックさん、今回のメニューはホットドッグでありますがどの様に攻略されますか?」
司会がブラックにマイクを向ける。
「カレーは飲み物ですよ」
「ちょっと何言っているかわかりませんが、素晴らしい記録を期待しましょう! そして今回のダークホースは……」
司会がステージの右端の席に目を向ける。そこには虚ろな目でヨダレを垂らしながらホットドッグの山を見つめるトロンがいた。その隣にはムチャも座っている。
「今大会の紅一点! 旅芸人のトロン選手! 意気込みを聞かせてください!」
司会がトロンにマイクを向ける。
「私、ただ、食べる」
「えー、なぜか片言ですが意気込みは十分伝わってきました。それでは大会の方を始めさせていただきたいと思います。時間は無制限、より多くのホットドッグを食べた選手の優勝とさせていただきます。皆さん準備はよろしいですか!?」
参加者達が一同にホットドッグを掴む。
「それでは、レディー……ゴー!!」
カーン
司会の合図と共にゴングが鳴り、皆一斉にホットドッグを口に詰め込み出した。
「おおっと、ラゲル選手すごい勢いで食べ進めております! そしてムーノ選手はパンとウインナーを分離して食べるという頭脳プレー! なんと! ジャイアントブラック選手は一気に三つ喰いだ!! そして……あれ?」
ムチャとトロンはモソモソとホットドッグを口に運んでいる。
「こ、この二人は慎重なペース配分のようですね」
すると、急に会場がざわつき始めた。
「な、何と、ムチャ選手とトロン選手! 泣きながらホットドッグを食べています!」
ムチャとトロンは涙を流しながらホットドッグを口に運んでいた。
「ムチャ……おいしいね……おいしいねぇ」
「あぁ……もうヌマネズミなんか食わなくていいんだな……」
食べるペースはゆっくりだが、二人の前のホットドッグは次々と胃袋に吸い込まれてゆく。
その後二人はベタルの村からホットドッグが消滅するまで食べ続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます