魔導喰い

 三人が急いで村まで駆け戻ると、そこにはいくつかの建物と数体のゴーレムが破壊された跡が残されていた。

「あぁ……誰がこんな事を……」

 老人はゴーレムの残骸の側にしゃがみこむと、残骸の中にある骨を拾い上げた。

 すると、村の奥の方に五メートルはあるであろう大きな影が見えた。

「あれは……魔導喰い」

「魔導喰いってあれか、魔力の宿った物を食べるっていうトロールみたいなやつだろ?」

「じゃあ、ワシの結界が弱くなっていたのは……」

「あいつが魔力の宿った結界の触媒を食ってしまったからだな」

「そしてゴーレムにもお爺さんが込めた魔力が宿っている」

「そんな……じゃあ、あいつらが……!」

「爺さんはここにいてくれ、俺達がなんとかする!」

 ムチャがそう言うと、二人は駆け出した。

 先ほど漫才を披露した広場まで来ると、魔導喰いの全貌が明らかになった。魔導喰いは他のトロールとは違い肌の色は漆黒で、手には猛獣のような鋭い爪が生えている。

 魔導喰いはゴーレムを一体掴むと、口に運びバリバリと貪った。

「行くぞトロン!」

「うん」

 二人は剣と杖を構えると二手に分かれた。

 魔導喰いの左からトロンが火球を放ち気を引き、ムチャがその隙をついて右側から足元に滑り込み脚を斬りつける。

 魔導喰いは呻き声をあげたがあまり効いてはいないようだ。

 二人は魔導喰いの周りを回りながら少しずつ攻撃を与えていく。

「こいつ固ぇ!」

「もう一度隙を作る。ムチャは頭を狙って」

「おう!」

 ムチャは建物に向かい駆け出した。

 トロンは距離を取り杖を振った。

 すると魔導喰いの足元の土が隆起し、魔導喰いの足を固定する。

「オラァ!」

 壁を蹴って建物の屋根まで上ったムチャが、勢い良くジャンプして魔導喰いの頭をめがけ大上段から剣を振る。が、魔導喰いが振り回した拳がムチャを捉え、ムチャの体はいくつかの建物を飛び越し大きく弾き飛ばされた。

「ムチャ!」

 その声に反応した魔導喰いは、トロンの杖に宿っている魔力の光に狙いを定めた。足の拘束をバリバリと砕き、トロンに迫って来る。

「炎よ」

 火球を飛ばし魔導喰いに命中させるが、効果は弱い。

「もっと強い呪文を……」

 トロンは詠唱を始めようとしたが、魔導喰いはもう近くまで迫っている。

 すると、どこからか雷撃が飛んできて魔導喰いに命中した。

「バケモノめ! よくも皆を!」

 広場の入り口には杖を構えた老人が立っていた。

 魔導喰いは目標を変え、ズンズンと老人の方に向かう。

「い……雷よ!」

 老人が杖を振るおうとした瞬間、魔導喰いは地面を抉るように蹴った。土砂が舞い上がり老人に降り注ぐ。

「ぐあっ……!」

 老人はほぼ生き埋めのような状態になっていた。

「お爺さん!」

「お……お嬢さん、今のうちに呪文を……」

 魔導喰いは身動きのとれない老人に向かい歩みを進める。トロンが魔導喰いを倒せる程の呪文を詠唱しているうちに老人がやられるのは明らかだった。

 その時、ゴーレムの集団が魔導喰いの前に立ち塞がった。

「お前達! 何をしている、逃げろ!」

 老人が命じるがゴーレム達は動こうとしない。

 ゴーレム達は次々と魔導喰いに食われ、砕かれてゆく。

 トロンはそれを見て、すっと目を閉じ呪文の詠唱を始めた。

「……我が身に宿る哀の感情よ、我が呼びかけに応え従え」

 魔導喰いが腕を一振りするごとに数体のゴーレムが砕かれる。

「幾重にも幾重にも、束ね束ねて矢となりて」

 魔導喰いが足を踏み出せば数体のゴーレムが潰される。

「その身は碧く鋭く、我の眼前に具現せよ」

 老人の目から涙が溢れた。

「今こそその力をもって」

 老人の前に立つゴーレムはあと僅かだ。

「我の敵を撃ち砕かん」

 トロンが目を見開き狙いを定める。

「穿て」

 トロンの頭上に現れた巨大な青い矢が、魔導喰いの頭部を音も無く貫き遥か遠くまで飛び去った。

 魔導喰いは膝をついた。そして倒れ側に無防備な老人に爪を振るう。

 その瞬間、最後の一体のゴーレムが老人の前に飛び出した。

「……ソノ」

 ソノと名付けられたゴーレムが砕ける瞬間、老人の目には土でできたその顔が微笑んでいるように見えた。

「ぜあっ!!」

 そしてソノよりも一足遅く、建物の陰から飛び出してきたムチャの一閃により、魔導喰いは完全に沈黙した。


 後には魔導喰いの死体と大量のゴーレムの残骸が残された。


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