老人の秘密

 ゴーレムに連れられ宿屋を出たムチャとトロンは、村の外れまで連れてこられた。そこには墓地があった。

「なんだよこんな所に連れて来て」

「ホラーな展開?」

 墓地の入り口に連れてこられた二人が辺りを見渡すと、墓地にある墓石はほとんどが掘り返されていて随分と荒れている。

「まるで墓荒らしにあったみたいだな」

「墓荒らしとかけて、謙虚な商人と解く」

「その心は?」

「ぼちぼち(墓地墓地)でんなぁ」

「そのネタは墓まで持っていけ」

 二人がそんなやり取りをしていると、ゴーレムが墓地の奥を指差した。

「ん?」

「あれは……」

 そこには昼間の老人が、ランプの灯りを頼りに墓を掘り返していた。

「あの爺さん何してるんだ?」

「お爺さんが墓荒らし?」

 二人は物陰に隠れ、老人の様子を観察した。

 老人は黙々と土を掘り返し棺まで到達すると、棺を開き中から白骨を取り出した。その白骨を布で包むと、村に向かい歩き出した。

 二人は息を潜め老人をやり過ごす。

「骨なんか掘り返してどうするつもりだ?」

「カルシウムの摂取」

「食べるの!?」

「冗談、ゴーレムを作ったのはやっぱりお爺さんだった」

「どういう事だ?」

「ゴーレムの触媒は魔力を込めた宝石や、人の念がこもった物、そして動物の死骸や「人の骨」」

 ムチャはゴクリと喉を鳴らした。

「じゃあ、あのゴーレムは全部あの爺さんが墓を掘り返してその死体を触媒に作ったっていうのか?」

 トロンはコクリと頷く。

「多分、そう」

「あのゴーレムの数だけ墓を掘り返すなんて尋常じゃねぇぞあの爺さん」

「とりあえず行こう」

 ムチャとトロンは老人の後を追った。

 村に戻った老人は、一軒の家に入る。少しして家の一室にかすかに明かりが灯った。

 二人は明かりが灯った窓から部屋の中を覗き見る。

 部屋の中にはあちこちに魔術に使う道具が並べられており、部屋の中心には魔方陣が描かれていた。

 老人は布を解き骨を取り出すと、魔方陣の上に丁寧に並べ、大きな壺から土をかけ始めた。

「もう大丈夫だ、私が治してやるからな……」

 老人はそう言うと、呪文書を手に取り呪文を唱え始める。魔方陣が淡い光を放ち、しばらくすると土がボコボコと泡立ち始めた。

 トロンがムチャの袖を引き、二人は窓から離れた。

「やっぱりあの爺さんがゴーレムを作ってたんだな」

「うん」

「しかし何で爺さんはゴーレム作ってるんだろうな。墓まで掘り返して」

「治す……って言ってた」

「何を治すんだ?」

「さぁ……」

 その後、老人は一晩中呪文を唱え続け、二人は交互に部屋を見張っていたが、森を彷徨った疲れがあったせいかいつの間にか眠りについてしまった。


 二人を宿から連れ出したゴーレムはいつの間にか姿を消していた。

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