ゴーレム村の謎
「まぁいい、お前らがここに来たのも何かの縁だろう。しばらくこの村でゆっくりしていくといい」
あれから老人はそう言うと、どこかに去って行った。
「あの爺さんボケてるのか?」
「お爺さんが言っていた「人」ってゴーレムの事かな?」
ムチャとトロンは村の中を散策していた。一軒一軒建物の中を探してみるが、そこには人の姿はなかった。ゴーレム達に声をかけてみるものの、立ち止まったり振り向いたりはするが何も言葉は発さない。
「なんか別世界に来たように感じるな。トロン、お前あのゴーレム達の事わかるか?」
ムチャはトロンに聞いた。
「ゴーレム自体は何の変哲もないゴーレム。ただ、本物の人間のようにある程度複雑に動く様に命令されてる」
「ゴーレムって本来魔術師達が使う戦闘用の土人形だろ?そんな事できるのか?」
「うん、良い触媒を使って丁寧に命令を組み込めばある程度複雑に動くよ。あのゴーレム達はみんな凄く丁寧に作られてる」
ムチャが辺りを見渡すと、まるで親子の様に歩いてるゴーレムや、挨拶の様なものを交わすゴーレム達までいる。
「あのゴーレム達はあの爺さんが作ったのかな?」
「多分」
「何でこんなところにゴーレムの村なんて作ってるんだろうな」
「遊ぶ金欲しさに」
「それ強盗した奴の理由じゃねぇか」
二人が散策しているうちにやがて夜が訪れ、ゴーレム達は皆家の中に入っていった。
ムチャとトロンは宿屋に入り、受付にいたゴーレムに
「ここ泊まれるのか?」
と聞くと、ゴーレムはコクリと頷き二階を指差した。そしてご丁寧に木の実や果物などの食料まで用意してくれた。
「いつまでこの村にいる?」
宿屋のベッドに座り、トロンがムチャに聞いた。
「明日には出て行こうぜ、客がいないんじゃお笑いもできないしな」
「ゴーレム相手に漫才する?」
「ゴーレムって笑うのか?」
「顔を作り込めば笑顔のゴーレムも作れるよ」
ムチャはニコニコ笑いながらズラリと並ぶゴーレムを想像してみた。
「怖いな」
「不気味だね」
コンコン
突然、部屋のドアがノックされた。
「はーい」
トロンがドアを開けると、そこには一体のゴーレムが立っていた。
二人の部屋を訪れたゴーレムは二人の顔を交互に見比べた。
「ムチャの友達?」
「そうそう、ゴレムさんお久しぶりです。相変わらず肌荒れが……って違う!」
異様な状況でもボケとツッコミを忘れないのは二人の芸人としての性だろう。
その時、ほんの僅かにゴーレムが微笑んだ気がした。
「今こいつ笑った?」
「笑った……かなぁ?」
ゴーレムは首をかしげる二人にゆっくりと手招きをした。
「ついてこいって」
「よし、行ってみるか」
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