ゴーレム村の老人

「お前ら、盗賊の類では無いだろうな?」

 老人はムチャとトロンに問いかけた。

「盗賊?……違う……俺たち……は……お笑いコンビ……だ!」

 ムチャはガツガツと果物を頬張りながら答えた。

「……食べ終わってからで良いわ」

 老人はムチャの口元からふんだんにジューシーな果汁を浴びていた。

「ガツガツガツガツ……ゴクン……俺はムチャ、このトロンてしてるのがトロン。俺達はお笑いコンビだ!」

「よろしく」

 果物で腹と喉を潤したムチャとトロンは改めて自己紹介した。

「お前ら芸人か。芸人が何の目的でこの村に来た?」

「別に来たくて来たわけじゃないんだ。食料を探してたら森で迷っちまってな、森の中をうろついてたらここに着いたんだ」

 ムチャとトロンは果汁まみれの口をぐしゅっと拭う。

「ふむ、森には人払いの結界を張っておいたはずだが……お前ら破ったか?」

「いや、俺達は破ってねぇよ。こいつが魔術を使えるから、効きが弱かったんじゃないか?」

 ムチャはトロンを指さした。

 トロンはふんっと小さな胸を張る。

「それにしてもおかしいな、シビレタケに偽装して結界を強化する触媒まで置いていたのに。獣に喰われたかな」

 老人は首をかしげる。

 二匹の獣は顔を見合わせた。

「じ、爺さん、この村に他に人はいないのか?爺さん一人で住んでるのか?」

 ムチャは苦し紛れに老人に問いかけると、老人は言った。


「何を言っている。人ならその辺を歩いているじゃないか」


 二匹の獣は再び顔を見合わせた。

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