ゴーレムの村

「さぁさぁ皆さん寄ってらっしゃい見てらっしゃい! ムチャとトロンの爆笑お笑い劇場の開幕だよー!」

「お代は見てのお帰りだよー」


 ムチャとトロンは森で半日迷ったあげくにたどり着いた村で、いつも通り興行を始めようと客寄せを始める。


「そこのハンサムなお兄さん見ていかないかい?」

「そちらのお嬢さんも寄っといで」


 しかし二人の前に観客が集まる事は無かった。それもそのはず、そこで暮らしていたのは人間ではなくゴーレム達だったのだ。


「やっぱり集まって来ないな」

「完全に無視されてる」

 ムチャは頭を抱えた。

「どうなってんだよこの村は! 何で人間じゃなくてゴーレムが暮らしてるんだ!?」

「知らない」

 人間大のゴーレム達は二人を無視して、まるで人間のように薪を割ったり水を汲んだりしている。


「せめて飯を食うところがあればなぁ」

 ムチャがそう呟くと、近くにいた一体のゴーレムが二人の方を振り返った。

 そして一軒の家に入ると、家の中から果物の入ったカゴを持ってきた。それをムチャの前に置く。

「え?これ食べていいの?」

 ムチャがそう聞くと、ゴーレムは何も言わずにどこかへ行ってしまった。

「これ、食べていいんだよな?」

「たぶん」

 目の前に積まれた果物はみずみずしく実に美味そうな色艶をしている。

「では」

 二人は果物を手にとった。

「いただきま……あ?」

 ムチャが果物にかぶりつこうとしたその時、ムチャの手を何者かの杖が止めた。

「お前達、どこから来た?」

 そこには髭を蓄えた老人が立っていた。

 ムチャはその老人に言った。

「とりあえず、食べながらでいいですか?」


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