少女の告白

 教会を出た三人は、少女の案内で貧民街にある大きな廃屋にやって来た。

「汚い所だけど上がって」

 そこが少女の住処であった。

 扉を開くと、少女より更に幼い子供達が廃屋のあちこちから飛び出してきた。

「お姉ちゃんお帰り!」

「お腹すいたー!」

「お客さん連れてきたの?」

 子供達は少女の周りに次々と集まった。

「この子達は?」

「この子達はお父さんやお母さんがいない孤児達なの。行く所が無いからここにみんなで住んでるんだ。こっちへ来て」

 そう言うと少女は廃屋の奥の一室にムチャとトロンを招き入れた。

「お前、いい奴なんだなぁ」

 ムチャの目は少し潤んでいる。

「そんな事無いよ。お母さんもそうしてたから」

 少女はそう言うと朽ちた椅子に腰掛けた。

「いつからあいつらに追われてるんだ?」

 ムチャとトロンも適当な所に腰掛ける。

「一ヶ月くらい前からかな。あいつらに襲われてた人を助けようとしたら殴られそうになって、その時に怖くなって変身しちゃって……それをあいつらのボスに見られたの」

「勝手に変身するの?」

「うん、危ない目にあったりすると変身しちゃうんだ。危ない時に変身すると、頭がかーってなって暴れちゃうの。だからできるだけ変身したくないんだけど」

 少女は悲しそうに俯いた。

「これからどうするつもりだ?ずっとこのままの生活を続ける訳にもいかねぇだろ」

「そんなのわからないよ。でも、あの子達を見捨てて他の町に逃げるなんてできない」

 少女はより悲しそうな顔をした。

「それなら、やる事は一つだな」

「え?」

「俺達がなんとかしてやる。だからそんなしょぼくれた顔してるんじゃねぇ!」

 ムチャがバッと立ち上がる。

「お前には笑顔が似合う! ニッコリ笑いやがれ!」

 そう言うとムチャは部屋の扉を開けて飛び出した。

「さぁガキ共! ムチャとトロンのお笑いライブの始まりだ!」

「お笑い!?」

「お兄ちゃん芸人なの?」

 子供達がわらわらとムチャに群がる。

 それを見て少女はあっけに取られてポカンとしていた。

「ムチャはああいう人なの」

「おいトロン! 早く来いよ!」

 トロンもゆっくりと立ち上がった。

 その日、廃屋に笑顔が絶えることはなかった。

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