少女の行方
翌朝、荷物をまとめた二人は宿屋を出た。町を歩きながら、これからどう動くかを相談する。
「あの子の事どうしようか?」
「どうするかは決めてない。とりあえず探す」
ムチャの意思は決まっているようだ。
「だよね」
トロンもそれに従うことにする。
二人は少女の容姿だけを頼りに貧民街で聞き込みを始めた。それは無謀な聞き込みかと思われたが、少女の情報は次々と集まった。
「あぁ、あの子ね。この前病気の婆さんを看病していたよ」
「あの子は飢えた子供達にパンを分け与えていたな」
「盗みをした子供をかばって衛兵に殴られた事もあったね」
情報を集めれば集めるほど、少女の他人思いな行いが次々に明らかになった。
そんな中、有力な情報を持つ老婆を見つけた。
「婆さん、あの女の子の事知ってるのか?」
「あぁ、よく知っているよ。あの子とあの子の母親には良くしてもらったからね」
聞き込みを始めてから母親の情報が出たのは初めてだった。
「あの子と、できればあの子の母親の情報も教えておくれよ」
ムチャは老婆の隣に座った。
「あの子の母親は貴族の娘でね、ある日森で出会ったウルフマンと恋に落ちたのさ」
老婆はゆっくりと語り出した。
「結ばれるはずのない二人は駆け落ちして、森に家を作り暮らしていた。その時に授かったのがあの子さ」
「それから?」
「あの子の母親の妊娠を知ったウルフマンは、栄養を取らせるために町に盗みに入り、衛兵に見つかって殺されちまったのさ。それを知ったあの子の母親はこの貧民街に移り住み、あの子を産んだってわけさ」
「その母親は今どこに?」
「三年前に流行病で死んじまったよ。いい人だったのにねぇ」
そう言うと老婆は目を伏せた。
「婆さん、あの子が今どこにいるか知らないか?」
「あんたもあのゴロツキ共の一味かい? あの子を追うのはやめときな、そっとしておいておやりよ。可哀想な子なんだ」
「俺達はあの子を助けたいんだ」
老婆はそれを聞いて驚き、二人の顔を交互に見比べた。
そして何かを悟った表情をすると、こう言った。
「あの子なら、神に祈ってるんじゃないかねぇ」
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