2.受け継がれる話


 私は山道をゆっくり下る。今日はなんだか久しぶりに人と話した気がしてうれしかった。不思議な出会いがあるものだと思う。またいつかシェリーに会いに行きたいなと考えながら行く時に見かけた公園を過ぎ家路についた

 家に帰ってから、悩みはシェリーに話したおかげでいくらか気にならなくなった。

 シャワーを浴びて眠る準備をしている時テレビをつけると見覚えのある顔が写った。

 テレビで紹介されていたのは一つの絵であった。有名画家の描いたと言われるその絵はまさしくあの老婆が安楽椅子に腰を掛けている姿で、隣には右後ろ脚に包帯が巻かれていた猫が描かれている。

 私は心臓が止まりそうになりながらも今日あったことを思い返す。

 確かに今日彼女に会い相談に乗ってもらった。猫の足に巻かれた包帯も私が巻いてあげたもので、もしかしたら絵のモデルはシェリーで―――

 「この作品は十九世紀初頭に描かれたもので実在の人物を―――」

 私はいったい誰と話していたのだろうか。私はいったい何をしていたのだろうか。私は今日―――

 「そしてこの絵画のモデルは長年この家に仕えた使用人であるとも言われています―――」


 

 「ママ!何かお話きかせて!」 

 「そうね。リビングに飾ってある絵の話をしましょうか。私が本当に経験した話を」

 あの後私は洋館のあった場所へと行ってみた。レンガで作られ道はあったが洋館は消えて無くなっていた。ひと夏の思い出で私をどん底からすくい上げてくれた大切な経験だった。



~十四の夏~

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十四の夏 冷凍氷菓 @kuran_otori

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