場面6

エヌは中央の脇で隣に立っている彼女を見つめながら話した。周りに人はいない。それはねこの装置の置かれている場所の広さを示していた。ただ、人間規模での話であったが。

 彼女はただエヌの方を見つめているだけであった。エヌの体はゆっくりと装置の中へ入っていく。だんだん暗くなってくる頭の中で、エヌは思った。意識の行方はどこなのだろ。ひょっとして、どこかで俺を思い出すのだろうか、それとも、今度は本当に俺は暗闇の中をさまようのだろうか。わからない。ただ、いまわかっていることは、俺は子供の時のことを思い出している。父親と母親の手のぬくもりさえ感じることができる。死んでも生まれ変わることの繰り返しなのだろうか。それは特別なことなのだろうか。ただ、普通に見えるだけなのだろう。日々の中で刺激や苦渋を味わえるはずである。味わっていたはずである。ただ、気付けなかっただけ。

 意識がもうろうとする中で、エヌは微かに、囁きのような、呟きのような、叫びともとれる声を聞いた。彼女の声だった。

「こうして人間は同じことを繰り返すのです。」


とある異郷の地。人が溢れ返り、バイクのエンジン音が街の音楽を作る。笑う人、泣く人、騙す人、騙される人、なにかを信じ、なにげなく。

 そんな中、2人の若者は沈みかけた夕日を背に飯を食べていた。

「なあ、今日はよく稼げたか。」

「ビントゥオン。」

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ビントゥオン @bigbird09

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