058:フラストレーション

 街の南側街道入り口、看板と並ぶようにして柵に腰かけた。森中を駆け巡ったからな。いや小走り回った……ええい語呂が悪いわ。要は端まで来ていたということだ。


 街道沿いだから、遮るものはなく視界は広けている。もぐもぐとパンを齧りながら、青空を見上げた。

 上空ではピョロピョロと甲高い鳴き声を響かせて、小鳥が横切る。つがいだ。


「くっ見せつけやがって」


 目を逸らすように遠くの空に視線を移すと、やはり青緑の山並みの合間に、すぅっと滑空する物体がいくつかあった。上空を飛んでいった小鳥と同じくらいのサイズだ。


「鳥はいいな。自由にどこにでも行けて」


 いやいやいや、でかすぎんだろ!

 あれぜったい魔物だ。あの辺って俺の知るマップ範囲外だよな。

 山の空飛ぶ魔物?

 居たな。ゲーム中盤から後半にかけて厳しくなる雑魚だ。


 ペリカノン――ゲーム中レベル45の、白いハンググライダーのような羽を持ち、黒い大砲のような嘴を持つ怪鳥。


「げぇ、あんなにでかくなるのかよ」


 イモタルが中ランク高難度に分類されるなら、ペリカノンは高ランクに分類されるんじゃないか?


「ぜってえ、会いたくねぇな」


 小回りは利かなそうだが、上空から砲撃受けながら地上を逃げるとか洒落にならない。しかも数匹の爆撃だぞ。

 幾ら高額依頼だろうがドロップ品が多かろうが、元が取れるとは思えないな。


 あいつらが落とすアイテムは、黒い塊なんていう曖昧な素材だった。

 ゲームのクエストには、採取カテゴリ依頼に『黒い塊50個納品』といった張り紙がされていただけだ。やたら採れるから常に99までスタックしておき、選択、即納品で金貯めるのにちょうど良かった依頼だな。


「素材の用途は、武器だっけ」


 良い装備は、後半の希少素材で強化作製していた。黒い塊は万能なクロガネに加工し……最近どこかで聞いたぞ。ああ、まとめ役とかいう筋肉ダルマだ。

 さすがにペリカノンに素手はないだろ……どんだけ脳筋だよ。


「まぁでも……あれを片づけてる冒険者が、いるんだよな」


 マジで頭が下がる。


 溜息交じりに弁当壺を袋にしまっていると、街の方から土を踏みしめる足音が聞こえてきた。振り返るまでもなく、集団は看板の側を通り過ぎる。

 兵士らしき一団だ。じろりと睨まれた。

 な、なんなんだよ。


 悪いことなどしてないのに、お巡りさんと目が合うと緊張するような感覚だ。しかし兵たちは足を止めることなく、そのまま街道へと出て行く。徒歩で。


 兵士にしか見えないが砦の兵ではない。砦の兵は革装備だが、より上等な金属鎧をまとっている。それも、先ほど考えていたクロガネ製らしき全身鎧だ。どんな金持ちだよ。それに肩のマークも違う。

 砦兵も二人ほど歩いていたが巡回には多すぎる人数だし、なにより兵に守られるようにした中に、布の制服を来た人が垣間見えた。

 討伐ではないだろうし、街道を連れ立って歩いて出かけられる場所なんか……あるな一カ所だけ。


「……祠?」


 今回の行商団は定期的なもんのように聞いたから思いもしなかったが、俺たちが報告した結界の問題に国から派遣された奴らか?


「へー、思ったより早かったな」


 希少なスキル持ちらしい話だし、国からなんて聞くともっと腰が重い印象があった。

 なんにしろ、これで俺の報告の件も一段落ついたような気がして、気持ちが軽くなっていた。




 それで、草刈り仕事の早く済みそうな北側を、明朝といわずにさっさと終わらせておこうと張り切って来たんだ。


「すっげー賑やか」


 ちょうど鉱山から荷物が続々と降ろされてきたところで、通りの北側出入り口付近一帯は箱と人の山だ。荷はすぐに大八車のようなもんに積まれて、街の中に入っていく。すぐに横道へと入るから、煤通りにでも持ち込むんだろう。人の方は荷運びだけにしちゃ多いし、別の方向へ移動していくから交代かもな。


 この周辺は草が生えるどころか、広い範囲の地面を綺麗にならしてあるのも頷けた。俺の出番はない。

 山側はすぐに上り坂になるし柵の外側も狭いため、ちょっと東へと離れたところから刈ることにした。


 水を飲むため砦そばの柵に腰かけた。辛うじて砦の日陰ができていて、一仕事終えた体には涼しくていい。柵のすぐ外に砦が幅を取っているせいか、柵に絡むように背高草が覆っているのに放置気味だったんだ。

 忍び寄る背高草をばったばったと薙ぎ倒したため、休憩も止むをえまい。

 鉱山から運び出された荷物や道具の置き場となっている広場に目を向けて、人や荷物の流れを見ていた。


「そこで何をしている!」

「は、はひ!」


 水筒を落とすところだった!


「なんだぁ? タロウか。どうしたこんなところで。採掘でもやりたいのか?」

「採掘?」


 声を張り上げたのは、砦から出てきた茶色い革鎧姿。二人の兵士には見覚えがある、炎天族と岩腕族の二人組だ。以前俺はこの二人に怒られたんだった。


「受付なら朝だが。いや……そもそも冒険者が採掘はできん決まりだ。まさか、護衛依頼を受けようなんて、考えてないだろうな」


 物欲しそうに見ていたのが悟られたか。ただ道具類とか気になっただけで、護衛依頼を受けようだとか微塵も考えてない。死んでしまいます。


「いや、ほらそこ。草を片づけてただけだ」


 慌てて砦の陰に積んだ束を指差した。表情を見るに合点がいったようだ。それで通じるのも微妙だが。


「ああ、そうだったな! 砦にも知らせが届いていたのを失念していた。草刈り依頼を募っているらしいな?」

「初耳だ」


 噂どころかお知らせになってるじゃねーか!


「森の警備してる奴らから依頼が殺到していると聞いたが、一段落ついたのか。なら今度は、鉱山入り口周辺はどうだ?」


 聞いてない!


「実は苔草に困っている。わずかな窪みにも気が付けば生えているんだが、弾力があってな。躓きそうになる厄介な草なんだ」


 コケソウって……草もそんな名前かよ。俺のセンスと大差ねえな。


「だが採掘従事者を連れ出すには危険な場所で、手を借りたいと思っていた」

「見ての通り俺も人族だし低ランクだ」

「はっはっは、謙遜するなぁ! アラグマ相手できるんなら大丈夫だ問題ない」


 その噂は広まってるのか……問題だらけだろ。


「いやあちょっと俺にはまだ難易度高すぎるっていうか準備が整ってないというか、心とか覚悟とか夢とか希望とか……」

「おっと、もちろん明日からすぐになんて言わんよ」

「こっちも今は、王都からの客相手があってな。人手が足りず自由に動けんのだ」


 もしかして、さっきの護衛だか案内だかしてる奴ら?


「街道に向かっていた団体か。やっぱりあれが偉い人たち?」

「おお事情通だな」


 役人も大変だ。役人といっても、地方公務員。ドラマなどで見た、田舎の駐在さんといったイメージがする。

 妙なことに考えが逸れかけたが、次に言われたことで意識が戻った。


「おっと、俺はメタルサ・アーガだ。エヌエンの宿に落ち着いたらしいな。時間ができ次第、伝言する」


 ゆったり構えた岩腕族の男が名乗った。


「おう、そうだな。一応俺も伝えておこう。ヴァルキ・プロルだ。どちらかの名で伝える。その時は予定を調整してくれ」


 ちょっと押しの強い炎天族の方も、きちんと名乗ってきた。この辺は冒険者たちとの違いかきちんとしてるなーと、つい頷いてしまったじゃないか。


「ああ、任せてくれ。こっちこそ依頼は助かるよ」


 調整が必要な予定なんかないけどな。

 二人に背を向け草の元へと舞い戻る。水筒を道具袋にしまって、ふぅと息を吐き出した。


 任せてくれ、だってよ。なにを格好つけてんだ。まるで本当に俺が募集したみたいじゃねえか。事実になる後押ししてどうするよ!

 また恐ろしい場所に連れていかれそうだし、覚悟だけはしておこう。

 準備なんか、心に鎧をまとうくらいしかできないけどさ……。


 逃げるように刈り進み、日が沈む頃には東の放牧地が見えていた。




 ギルド内をぐるりと見渡して、努めて気にかけずにいた現実を受け止めた。

 ちょうど冒険者の多くが四方から戻ってきているため、むさい。そうだ、何度見たって現実は変わらない。


 むさい――。


 幾ら外見から受ける印象を覆すような、いわゆるゲーム的にデタラメな身体強化魔法などが存在しない世界とはいえ、圧倒的に野郎ばかりのげんなりする空間だ。


 こういったシチュエーションならお馴染みの、女冒険者とのあれやこれやの機会への期待もあった。そりゃ、元がゲームか小説かで傾向は違うが。

 俺の場合はゲームだったら、おっこいつ頼りになりそうだなと、見るからに強そうな野郎キャラの方を使いたいと思うが、ファンタジーな小説ならば逆だ。


 居なくはないんだ。

 例えば、現在奥の席に集まっているグループの中に、張りのある褐色の肌が眩しいお姉さんがいる。短いワイルドな赤い髪も、動く度に幾筋かが頬にかかり、その下から覗く細く鋭い瞳がサディスティックなセクシーさを醸し出している。

 種族ゆえか俺よりも二の腕が逞しいところは気後れするが、それよりも残念なことがある。

 彼女は、その隣に並ぶ、よりガタイのいい炎天族の男の嫁だ。


 そう、たまに女性冒険者を見かけても、既に誰かのパートナーなのだ。女性比率が少ない職だもんな。普通、そんなところに入ってきたら放っておかれないに決まってる。


 あれ?

 確か一人、可愛いのに残念なソロの冒険者がいたような……いや気のせいだな。

 きっと羨ましさが見せた幻に違いない。


 飢えてんのかな。そんなご身分じゃないんだけど。

 思えば、日本にいたときより女っ気がない。

 俺と関係あるなしは別として、道を歩けば当たり前に老若男女を目にした。なんの戦闘準備も必要ないし、着の身着のまま歩けるほど平和だったからだ。


 目の保養になりそうな場所は大通り沿いだけだ。

 商店街と呼べそうなギルド付近の店には、全種族の女性が集っている。店員にも、今晩の食材を買いに来る客にも女性は多い。

 それに織物など手工業関係が、西側の住宅地の北側に固まっているらしい。薬屋フォレイシーのある辺りだ。そういった職場には、人族以外にも手先の器用な首羽族だとか、平均的になんでもこなせる森葉族の女性が集まっていると小耳にはさんだ。


 聞いてしまったのは、もちろんこの場でだ。ああ、今もまた聞きたくないのに耳が拾ってしまう……。


「んで、女房がいうにはよ、最近ケダマ草がちょくちょく入ってくるんだと。で、ほらこれ貰ってくれないか。余分に作ったから世話になってる奴にでも渡せって、うるさくてなぁ」

「だからって、下着ばっか何枚も貰っても」

「だからさ、お前んとこの嫁からも言ってやってくれよ。シャツも欲しいってさ」


 そうか。そうかよ。裏切者どもが。てっきり冒険者なんて、どいつもこいつもうだつの上がらない寂しい奴らだと信じてたのに。街の中に人族以外の女性住人が多すぎるというところで気付くべきだった。


 ケダマ草採取が役に立っていたと知れて、俺は嬉しいよ……それくらいしか自分を慰める要素がない。

 ほんとその他の情報は要らなかった。この街が遠いせいか、どうも家族で来るやつが多いらしい。出稼ぎするとなると、村の方では嫁の縁を持ってくるとか、そんな話が結構聞こえてくるんだ。家族で来るのを、ギルドも推奨してるんだろうか。

 聞けば衣料品やら雑貨製作にしろ、女手も欠かせないようだもんな。

 故郷だとか、どこにも縁のない俺には視界が霞んでくるような内容だ。

 やけに背中がすすけた気分で報告もそこそこに、とぼとぼと宿に戻った。




 部屋に着くなり机に向かう。


「あれくらいの圧力に負けてたまるか」


 ここはイマジナリーガールフレンドを……だめだ! やめろっ! そこまでは落ちぶれたくないというか帰ってこれなくなるぞ! くっ……鎮まれ、俺の右手!


 あかん、抑えられない。ガシッと鉛筆を掴む手を恨みがましく眺める。


「かまうもんか……禁呪を、解放する――開け次元門ハローワールド! 出でよ我が前に、弐次妖冥サモン・・召喚TypeⅡワイフ!」


 サカサカサカ――鉛筆が紙上に形を浮かび上がらせる。

 そこには見事な丸みを帯びた女体の影が――うおおおおお!




 しばらくの後に、丸めた紙屑を放り投げていた。


「ふぅ……高次元の概念だ。この世界に持ち込むには、早すぎたのだ」


 そこは低次元の間違いではというツッコミはなしだ。描けたのは、カピボーから四つの棒が生えたようなものだった。俺には絵が描けないんだったよ。


「まあいい。その内、俺にも春は来るし……」


 来てくださいと祈りながら不貞寝した。



 ◇



 目が覚め朝飯を食いに食堂へ向かうと、既に泊まり客の冒険者が居た。

 珍しいなと思い声を掛ける。


「早いな」

「よう、ちょっくら遠出してみようと思ってな」


 だらけるのも飽きてきたってところだろう。護衛対象の仕事が終わるまで遊んでいていいよと言われたって、何もない街だ。休養にはなるだろうが、休暇にはならない。ご愁傷さまだ、田舎を堪能したまえ。


 思い切って俺から話しかけたからだろうか、前より饒舌になったような。四人は飯を詰め込みながら、誰に話すともなく話している。

 ラジオすらないしちょうどいい。俺もその話を聞きながら丼から汁を啜った。

 今までは、冒険者なら何気ないお喋りと思ってスルーしていたが、魔物の強さの違いとか意外な事を知ったし、よく聞いた方がいいかもと気持ちを改めたのだ。


「でもな。ここは随分と基準が厳しいだろ? 今日は結構、本気出すつもりでいんのよ。前衛は期待してんぜ、メドル」

「期待って、後ろで怠けるなよバルフィ。それで怪我でもしたら護衛失格だけどなハハハ」

「まったく、わざわざ地元から出て、こんな場所で冒険者になろうってやつは、とんだ物好きだと思うぜって、おいっハンツァーてめぇ肉食ったろ!」

「きたねぇなぁ。コルブ、口閉じろ。飛んでくんだろ」


 ハンツァーが岩腕族で、コルブが炎天族の男だ。二人がすさまじいスプーン捌きで攻防を繰り広げ始め、残った森葉族のバルフィと、もう一人の炎天族メドルが溜息をついて眺める。

 子供かよ。

 いや、この干からびた二切れほどしかない乾燥肉とはいえ、俺でも奪われたら切れちまうよ。


 残念ながら今朝は、大して話は聞けなかった。ちょうど食い終わったから、巻き込まれない内に出よう。なんせ中ランク上位者どもの争いだ。木のスプーンでさえ、俺は穴だらけになってしまうかもしれない。


「……お先ー」




 今日から街の東方面に回り込む予定だが、先にギルドへ向かう。

 昨日は草刈りの確認証明を何カ所かでもらったために、一枚渡し損ねていた。


 ぶらぶらと歩きながら、これまでにぼんやりと聞いていた四人の話を思い出せるだけ思い出し頭でつなぐ。


 四人は王都マイセロからの護衛でガーズまできたが、王都に住んでるわけではなく、大きな街を点々としているようだ。あっちの街でどうだとか、話している内容の場所がよく飛ぶ。


 四人だけでなく、各地の冒険者の入れ替わりはそこそこあるらしい。嫌になってやめるなどではなく、そのうち他の場所が気になってくるようだ。特に遠征したときに、そんな気になることが多いらしい。

 他にも幾つかの大都市の賑やかさが魅力でとか、比較的人手の足りない穏やかな辺境でのんびり仕事しつつも頼られるような場所など、色々と思うところができるのだとか。


 確かに、話を聞いていれば他の場所に興味がわかないでもない。ただ俺だとパーティー組むのも難しいし、一人で気楽にというのは無理だしな。


 もしも、何年か経って、中ランクにでも上がれたなら。

 早めの引退ってわけでもないが、旅に出てみるのはありかもな。行商団にくっついて行けば、俺でも魔の山脈を超えられるだろう。


 中ランクに上がるとしたら、強さからではなく採取実績を認められ……草か。

 うん無理な気がしてきた。ランクはともかく、何年か生き延びることが出来たなら、外の世界を見てみるのもいいかもな。


 まあ俺が最も興味あるのはこの街だから、そこまで旅したいとも思わないんだけど。せいぜい旅行できるならしてみたい。そんな程度だ。


「日帰り馬車ツアーとかあればいいのにな。弁当付きで」


 山脈越えはあるし広い平原も続くらしく、日帰りでなんてどこにも行けない。


 この街の周辺は、どこから来ようと越えなくてはならない険しい山や渓谷があり、大抵その辺は魔脈が巡っていて、魔物が湧き出すという魔泉が点在する。

 中ランクの上位から高ランクの魔物がうじゃうじゃしているだろう。実際、ペリカノンらしき魔物の影も見た。

 どれだけ山脈を越えるのって大変なんだろうか。


 一つだけ興味があるとすれば、英雄シャソラシュバルの軌跡では知ることのできなかった世界を見れるということだな。

 ゲームデータの外なんだ。

 よく似た異世界に来たと思ったら、リアルになっただけのやっぱりゲーム世界でしたとかだったらと、多少不安になる。

 一定の距離を街から離れたら何もなかった、なんて嫌だな。


「気になる……一度くらい、出る機会を作ろう」


 生活と貯金が先だ。何年も先になるが、予定が埋まっていくというのは張り合いがあっていい。そう思おう。




「ゲームも、すっかり縁のないもんになっちまったな……」


 最後に遊べたのが、このゲームで良かったのかどうか。

 つまみぐいプレイが多いとはいえ、年に遊ぶタイトル数が多すぎて定期的にバックアップしてしまうから、セーブデータはゲーム機本体に残していなかった。

 期待の新作を買うだけでなく体験版やらぶっこんでたら、あっという間に容量は一杯になるし、いちいち探してくるほどの時間もなくて、新規に始めてしまったんだ。


 もし、あの時、セーブデータを残したままだったら――。

 カンストデータで来れたんだろうか。それで来れていたら、どうなってたんだろう。

 惜しいとか、悔しいではないな。あれ、わくわくする?


 そのカンストデータに人族補正がかかったらどうなるんだろうな。それでも目に見えて強くなる?

 きゃー人族の癖にさいつよ! ステキ!

 なんて俺でもなれたのだろうか!


 補正が割合だったら、体感だと余計ひどいことになりそうだな……。動こうとする度につんのめったりして。これがゲーム脳だろうか。


「ゲームなぁ。何か持ち込めるものでもあればいいけど」


 ボードゲーム系だと将棋とか囲碁なら作れるかと思ったが、大してルールを覚えてない。

 ……あんまり、元のことを考えるのはよくないな。


 アナログゲーム、ここにもあるんだろうか。宿に戻ったらおっさんにでも聞いてみようかと思っているとギルドに着いた。


「これお願いします」

「あら、タロウさん、朝に報告とは珍しいですネ」


 大枝嬢に挨拶しつつ依頼書とタグを手渡して、窓口に立っていると、部屋の隅にある扉がけたたましく開く音がした。ギルドの裏手への扉だ。

 そこからぞろぞろと人が出てくる。この前見た金属鎧姿の兵。その後に、筒状の布をまとった人物が足早に続く。そこから怒声が響いた。


「いつまで待たせる!」


 その女の声に、ギルド内は静まり返った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る