057:草レベル
また俺はやけっぱちになり、夜だろうと慣れてきたしカピボーごとき、とことん退治してくれるわと無駄に意気込んでいた。
森の中まで入り込みはしないが、藪をつつきまくる内に、知らず端の草原側まで来ているのに気づき多少は頭が冷える。
そこで周囲を見渡すと森沿いの、そう遠くない所に月夜に浮かぶ影があった。
ほえっと飛び上がり、とっさに木陰に隠れて様子を伺う。
見覚えがある細長い体、ふさふさとした黒いシルエットはケムシダマのようだ。
「おおっとタロウ選手、スーパーカピボー大戦はここで棄権か? どうですかね解説さん。まあ泥仕合でしたからね、大会はまだまだ続きますから、ここで一戦を諦めて次へ繋げる思い切りも、時には必要じゃないかとですね……はい解説さんのお話はよく分かりました。なんとタロウ選手、意外な動きを始めましたよ?」
内容に滲ませたハイテンションとは裏腹に、ぼそぼそと小声で実況する。この辺には、あまり耳のいい魔物はいないからな。耳かは知らないが、よっぽど大きな音でなければ反応はない。
意外な動きと言ったのは、不審なケムシダマに近づくことにしたためだ。気合いを入れ直しがてら、実況でもしてみれば自分が何をしているか行動がよく分かるかと思ったが、分かったところで無謀さが消える訳でもない。
視線も意識もケムシダマに集中し、距離が近付くにつれ自然と口を閉じる。
木の陰から陰へと移動しつつ周囲を窺うが、のそのそと森へ入り込もうと近付いているケムシダマは、一匹だ。俺も大概に節穴だから何度も確認したんだ。
繁殖期は短期間に続けては起こらないようだし、そんな危険が予想できるなら、高ランクのほとんどを遠征なんて出さないだろう。
街の方を振り返れば、暗くて距離はよく分からないが、こいつらにとっては結界にも近すぎるんじゃないか? こんなに近づくには理由がありそうだが。
あ、音がどうとか言ってたが、ランタン持ったままだった。カピボーたちは灯りも判別してそうだけどケムシダマは知らん。今さらだがポンチョをかぶせてじっとしてみる。特に気が付かれなかったのか?
飛び出すには遠い程度の距離まで近づき観察するが、やはり一匹。
これは、チャンス!
距離をつめようとケムシダマを見ると、思い切り伸ばしきった体を地面に張りつけ、ぷるぷると震えだした。
「うわっ、きも」
実はばれてる?
まさか、俺の知らない特殊攻撃を仕掛けようとしてないだろうな……?
粘液攻撃だけでも厄介なのに、知らない攻撃などたまったもんじゃない。暗い中で特攻かまそうとしておいてなんだが、やっぱ危険だしと目標を捕捉したまま、そっと後退を始める。
「ぴ、ピキュキケキ……!」
「ひぃ!」
へ、変な声出してんじゃねえよ、びびんだろ!
同時にケムシダマに変化が始まる。なぜか体表が透過していくような。ちらちらと元のくすんだ緑色の体表へと戻るから気のせいかと思ったが、まるでカメレオンのような色の変わり方だ。だが、その間隔が短くなり、やがてケムシダマ型ゼリーができあがる。瞬きも忘れて見入っていた。
まだ俺は何もしてないぞ。他に誰もいないし魔技らしきものもなかった。
どうしたもんかと踏み出そうとしたとき、赤い塊はでろっと形を崩して地面に広がる。
「まさか、勝手に死んだ?」
安心して数歩近付いたところで、地面の赤い塊が蠢いているのが見えた。驚いて下がる前に、分裂した幾つかの塊それぞれが新たに形を作る。今度は素早かった。
一気に丸くなると、ふさっとした体毛をまとい、そいつらは飛び上がる。
「ケェ!」
ケダマかよっ!
「生まれるな死ね!」
反射的に剣を突き立てると普通に攻撃は当たった。ただの二脚ケダマだ。生まれた四匹が襲い掛かる前に次々と倒す。
「ぷキエェッ……!」
謎のケダマは、無念にも聞こえる叫びを残して、普通に消えていった。そいつらのマグの煙も、何事もなくタグとコントローラーに吸われている。
謎でもなく、ただのケダマ?
「一体なんだったんだ……」
ふと大枝嬢がさらりと口にしていた、はぐれ魔物という言葉が浮かぶ。
単純に群れからはぐれた奴のことだと思っていた。本当は、こういった奴らのことを、そう呼ぶのかもしれない。
魔物の生態というか、増え方は聞いていたじゃないか。強い魔物が下位の魔物へと分裂し、邪質の魔素を薄めることで聖質の結界を超えようとするからだって。
気が付けば近くにいて増えていくとか、やめてくれよ。ホラー映画じゃないんだからさ。
「夢に見そうだなぁ……」
ケムシダマが分裂した辺りの地面を調べてみた。剣で突っついてみたが特に意味はない。なんの痕跡もなかった。
今までも時々カピボーの中にケダマとか、ちょっとレベルの高い奴らが混ざっていた。ケダマが素早いから目立つが、キツッキなど奥の方のやつらもいることがある。一匹紛れてくるくらいで、グループでの移動は見た覚えがない。そいつらが分裂のために近付いてる奴なのかもな。
昼間に見たことがないのは、たまたまだろうか。もしかして、そのために藪などに潜んでる?
一見は無防備に見えるし、敵に見つからないように増やすなら、暗がりを選ぶだろう。残念ながら闇属性だとか中二要素はなさそうだし。
こんだけ広い場所だ。偶然とはいえ見学できたのは運が良かったかもな。珍しいもん見たと思って喜んでおこう。二度はいらない。
ふいに強めに吹いた風を、肌寒く感じた。
人工的な物音はないが、風が木々や草を揺らすザァッとした音は常にある。静かすぎて怖いほどといったことはない。
でも、考えれば草原の中にぽつんと一人って、めちゃくちゃ怖いシチュエーションだよ。
スプラッタ映画なら、得体の知れない敵を退けて安心してる今こそ、森に引きずり込まれて惨殺コースじゃねえか!
「よし、戻ろう」
長居しすぎはよくない。
柵に向かって歩きながら、これまでに出会ったはぐれ魔物を思い返す。
普段から森に入ってる奴らなら結構見てそうだな。そうじゃなきゃ、魔物が分裂して増えていくことが当たり前の知識になってないだろう。
考えたら毎日毎日こいつら、飽きもせず湧いてくる。相当の数が分裂して押し寄せてきてるってことだ。逆に見たことない奴の方か珍しいかもしれない。
余計な想像が膨らむ。
これ、冒険者たちが毎日片づけてなかったら――。
こんな街、あっという間に魔物の海に飲み込まれちゃうんじゃないか?
おっさんが、言ってたな。一言で表せば、お互い様って。作物を育てられるのも冒険者がいるからだ、俺が宿で食ってる飯は俺自身が育ててるようなもんだって。
ますます、身につまされる。
一暴れして気分もすっきりしたと思ったら、またへこんできたな。
だが俺に、暢気にへこんでる暇も資格もない。
「明日から本気だす」
しまった。遅くなったから洗濯できない。さすがに水音が響きすぎる。
ジャケットの替えも欲しいなぁと思いつつ、とぼとぼと宿へ戻った。
◆
手足は泥まみれだし、服のあちこちに草の断片がくっつき草の汁で青臭い。
今朝も当たり前のように草刈りに来ていた。西の森沿いの続きだ。
昨晩は時間を忘れて徘徊し、戻るなりぐったりと眠り込んでしまった。ペースを守らなきゃなぁとは思うんだけど。
俺がそれなりに暮らすには人より長く働かなければならないし、他の冒険者にない唯一の利点は持久力しかない。要求と能力が合致してるんだから、やらない手はないんだ。
だけど生活のためといった理由があったところで、なんの目標もないというのは精神的に辛い。
そこで、ひとまず打ち立てた目標は、ガーズ一周草刈りツアー。
タロウの野望、冒険者街を脅かす草軍団を殲滅し統一を果たすミニゲームだ。何を統一するのかは知る由もない。そんな妄想でタイムアタックやって、脳内でハイスコア出してみたりするのだ。
そんなことを、なんとなく決めて街を回り始めて数日。ようやく西の森沿いの北端へ到達!
人の手が入った場所だし一日もあれば北側へ抜けられる見積もりが、一昨日、昨日と連行されているからな。ささっと終えて北側へ回り込んだ。
街道の北口付近は、山方面へ行く人や荷物の出入りが多いからか、さらにさっぱりしていたのを確認している。
そうなると次は、東側の放牧地辺りになるかと考えて、何かが気になる。
数日毎に何かしようとしてたような……あ、ケダマ草むしってなかった。そろそろ採取しないと、とびだせケダマの森になっちまう。シャリテイルにも怒られそうだ。
仕方ない、ケダマ草退治に予定変更。
「それも、昼までにしとくか。で、柵の側で飯食おう。んで、午後は……うーん」
様子見てから決めよう。
で、やってきたら案の定かよ。
「ぽこぽこ生えやがって」
文句は言ったが、これは稼げると声には喜びが滲んでいる。
稼げるも何も、毎日一定量ずつ採取するか、まとめてかというだけの違いで、トータルの額は変わらないんですけどね。そこは気分ですよ。
いそいそと藪に手を伸ばせば特大のケダマ草が――。
「ケキェ?」
「本物かよ!」
「ケピィッ!」
発見、即排除。
「マグ感知持ちが羨ましいよほんと……」
草原沿いを毟りながら歩いていたら、分裂シーンを見た場所まで来ていた。花畑の方まで見渡すが、一帯にケムシダマの姿はない。
不思議なもんだ。何十年も昔に邪竜のスキルだかなんだかで生まれたらしいが、それも本当に確認できたことなのかね。まあ誰かが関連を調べたんだろうけど、大変な作業だったろうな。頭使うだけでなく、戦闘も必要だろうし。
ここで俺が詳しくなれそうなのは草くらいか。いや、それも無理だ。森深くを彷徨えば魔物も強くなるんだし。
お、いい題材じゃないか。本日のルーチンワーク中の妄想はこれにしよう。
今の時点で知ってる、採取可能及び除去の必要な草どもにレベルをつけるなら。
背高草はレベル1。
ケダマ草、レベル3。
すだれ草、レベル5~10と幅があるのは地上の葉と地下の根という二段変身があるから。それと麻痺(弱)攻撃持ちだな。
触手草、レベル6。魅了(とある業界の人々にとっては)攻撃と、見た目の気持ち悪さとぬめぬめ度合いがMPを削る。
蜘蛛の巣草、レベル8。細かい枝葉が広がり行動を阻害する麻痺(弱)発生。
団扇草、レベル20で、特に体力値は高いが、特殊攻撃は毒(中)のみ。
って感じでどうだ。これだとインフレしすぎるか?
世の中にはもっと得体のしれない、有用無用な植物は幾らでもあるだろう。
「99がレベル上限だと思ったか? 馬鹿め、999まであるんだよ!」
とまあ、そんな風に足していけばいいかな。
この世界にも植物学者とかいるんだろうか。フラフィエは研究論文みたいなもんが回ってくると言っていたっけ。仕事を考えれば、マグを使用する道具に関連するもの専門だろうけど。
でもシャリテイルは、魔物の研究もされたような口ぶりだった。生活に根差したことには、住民それぞれでやるだろうから、国も魔物やマグに関することだけ補助するといった形だろうか。
補助だと思うのは、国が主導してるとは思えない理由がある。
なんなんだ、あの魔物たちの名前。ダジャレまみれというか。
以前はゲームだし、分かり易さが一番なんだろうと疑問を持たずにいた。ファンタジーなのに、そのセンスはどうよとツッコミは入れていたが。
現実なら明らかに魔物の命名センスがおかしいだろ。俺が勝手につけてる草の呼び名も大概なのはスルーだ。
妙なことを考えてる内に、道具袋はぱんぱんに膨らんでいた。しかも四袋分。
余分な袋もないし、今日はこれくらいにしてやろう。
レベルがどうのといえば、俺もだ。
「……すっかりレベルなんか、上がらなくなっちまったな」
体感での話だが、ノマズを倒して以降に、それまでの上がり方のような頻度はない。だとすれば、やはりレベルが上がる毎に必要な経験値は増えていくんだろう。
かといって鈍足補正が緩和された感じはないから、俺が倒せる魔物の上限を考えれば、これが頭打ちなんだろうか。
念のため周囲の藪をつついてから、なんとなくコントローラーを取り出し中心に触れた。すっと青い光の文字が黒い表面に表示され、横に流れる。
文字を出すのも久々だ。見たところで何も起こらないし、情報があったって次は何を倒せばレベルアップだとか、予定を立てる楽しみもないからな。
本当に俺には無意味な機能だよ……。
『レベル22:マグ39459』
うーん……特に感想もない。
近頃は、魔物の討伐数だけなら増えている。そのほとんどがカピボーと思うと悲しいが。
やはり魔物もランクが上になるほど実入りが良くなるだろう。マグが経験値にあたるなら……と思ったが、モグーとケムシダマのように同レベルのはずが、マグ量の一致しないやつもいるか。
「そういやケムシダマから分裂したのは、ケダマ四匹だったな」
レベル4のケムシダマから、レベル1のケダマ四匹と、ぴったり分割されてる。
偶然か?
でも、全レベルの魔物がいるわけでもないのに、一部はレベルが被るだとか、今思えばよく分からない設定だったな。
コントローラーをしまうと歩き始める。
焦っても仕方ないが、ますます狩りの時間が増やしたくなった。単体で稼げないなら数をこなすしかない。
ギルドへケダマ草を納めると、また南の森へと戻ってきた。
手近なカピボーとケダマのテリトリーを適当に蹂躙しつつ、ふと考え込む。
考えたら、妙なレベルの上がり方をするよな。俺は苦労したが、実力的には低ランクの魔物ばかり倒してきた。
そんな魔物を倒すくらいで、ポンポンと上がっていたのがおかしかったんじゃないか?
またレベルの有無に意識が向く。無いと疑うのではなく、逆だ。
あると考えた方が、辻褄の合うことは多い。それも、俺にだけではなく全員に。
いつぞやの炎天族の子供たちと、人族の子供たちの動きの違いを思い比べる。
機敏な動きでカピボーを倒した炎天族、草束の壁におぼつかない足取りでぴょんぴょんと飛びついていた人族の姿。
同じ年ごろに見えても、俺が知っている子供といえば、この人族の方だ。
生まれつきの種族差もあるだろうが、そこからさらに石ころで魔物退治できるようになるほどの差を生むのは、マグを得られるかどうか。魔物を倒せるかどうかが関わっているように思える。
それがあの子供たちの差ではないのか。
あ、それだろ。
子供にレベル差があるなら当然……まさか俺、赤ん坊だった……?
「ケャッピケェッピ」
思わず突っ伏していたら、垂れたポンチョにケダマが潜り込もうとしていた。
「俺は草じゃねえぇ!」
「ケュ……!」
気を取り直して、大人の話に戻ろうか。
ゲームのようなステータスは存在しないとしても、ランクごとの難度があるなら、人間にも当てはめているだろう。その強さの基準はなんだ?
思い出したのは、遠征に出たやつらの穴埋めに出かけていた奴らの多さだ。
同じ冒険者の中ランク同士だというのに、上との差がありすぎる。戦闘技術の習得率によるものだけとは思えない。
ギルドは、なるべく冒険者に負担がないよう対処している。多くの冒険者を、同じ場所に派遣するように采配をしていることなどだ。
だけど安全だからこそ経験値は分配され、強さも均等になっていく。全体の底上げを狙うなら良い手だと思う。
それでも差が出てくるのは、パーティーの役割分担のせいに思えた。
アタッカーを受け持つ奴がいたら、そいつが順当に強くなる。強い者が、強い魔物を倒す。強くなればランクも上がって派遣される先も増え、より強い魔物を倒す機会も増える。
でも、実際の高ランク者の数は片手で数えられるほどで、後は中ランクの上位者に頼っている状況のようだ。
ここに居る奴らの態度を思い返すと、仲間思い、なんだよな。
パーティーを組んでいれば、強いからと一人で高ランク依頼を受けることはないだろう。そこで、ある程度強くなるとレベルアップも鈍化する。
それ以上に強くなりたいなら、ソロで回るしかない。
とはいえ初めからソロだと数が捌けないから効率は悪いだろうし、強くなる前に死にそうだ。
ギルドが人を手配しているからソロで活動する奴なんてほぼいないだろうし、高ランクが少ない理由はそんなことじゃないかと思えた。
連想が過ぎただろうか。だけど妄想というには妙に納得できる。
そうだったとして、俺に辿れる道ではないが。
「キャピッ!」
「おわっと!」
草むらから飛びついてきたカピボーを躱して、短い尻尾を踏み剣で突いた。
どのみち俺が強くなりかたを知ったところで、「人族でもなれる!? 高ランクになる方法!」といった説得力皆無な本を書けるくらいだな。
レベルを上げようにも、装備を整えるには金がいるし、金を稼ぐには戦わないといけないしで堂々巡りだ。しかも低ランク装備を揃えたところで死ににくくなるくらいのもんで、俺の動きがいきなりプロっぽくなることはない。
生活費を差っ引いたら貯蓄できる額もわずか。何か不測の事態が起きても困るから、全額を装備に割くわけにもいかない。
現実でだって武道やらスポーツでも、それなりに身に着けるには何年とかかる。
まあ、武道とも喧嘩とも違うし、魔物向けの動きを鍛えていくことくらいなら俺にもできると思う。いや、成果は出ていると感じている。誰だって続ければ最低限の底上げがあるなら俺にもあるということだし。
こうして人生が続いていくなら、忍耐力を上げて地道に出来ることをやっていくしかない。
今のところは、宿代を一月分くらい貯めれば少しは安心できるだろう。その後の稼ぎの余分で革製の防具も揃えられそうだし、それからなら無茶もできるというものだ。
現実のRPGって、世知辛いよな……。
ケダマを倒しつつ奥の森との境目まで進んだが、ここで休憩したら折り返そう。
もっと魔物を倒さないとまずいかもと心配になり、つい南の森で討伐していたが、ケダマ草毟りに来たら北へ行くつもりだったろ。
水を飲みつつ、コントローラーについて考える。無駄だろうと思っても、どうせ他に考えることもなくて暇だしな……。
確信できたのは、コントローラーが俺にとって重要らしいことだけだ。てめえで考えろということなのかと思うが、謎解きゲーは苦手だったんだよ。
そもそも、説明書があれば済むことだ。特に謎が解けたからと帰れるわけでもないだろうし。
本当はコントローラーの方がこっちに来るはずが、おまけで俺が付いてきたと言われた方が納得できるほどの不遇っぷりだ。
かといって別の受け取り手がいるのかという考えは一瞬で消える。あえて別世界から取り寄せるほどの機能ではない。
レベルを確認できるが使用者のものかコントローラーなのかの判別不能。やたら貯め込んでいるマグは、ただのスコアなのか使えるものかも分からない。ただし絶対に壊れないような気配はある。
レベルアップ時だけとはいえ傷を癒すことがなければ、正直いらねぇよ。こいつさえなければもう少し他の荷物を持ち歩けるのに。
「途中から愚痴になってきたな。やめやめ。んおぉ」
「ホケッ!」
「うわっ、た!」
帰ろうと立ち上がり、伸びをした手が、ホカムリを殴り飛ばした。またか。
「ここは、お前の寝床なのか? 場所取って悪いな。永遠に寝てろ」
「ケピィ!」
俺の方が悪役っぽいな。ま、まあ、魔物の側からしたら俺は冒険者なんていう悪党中の悪党だよな。
「正義とは己の立ち位置で変わるものさ。悪く思うなよ」
これ悪役だ。
草刈りマラソンの目標を掲げたが、魔物狩りもやりたくなってきたな。まずは街巡り優先で、余った時間で南の森殲滅タイムアタックに挑戦しようかな!
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