とある姫君の想い
女が宝石の
花嫁が纏う装いたる『双ツ併せ』に身を包む
かちり。
貝の併せを開けば、|
「あるじさま……」
そっと貝の縁を撫でる。夫と成るモノが送った
やれ優れた守護を持つ。やれ命の煌きを持つ。故に『愛されておりますな』と周囲がもてはやした。
だが深雪は小さく首を振る。
そうではありません、と鈴のような声で唄うのだ。手に有る
――深雪に、似合うと思うてのう。
ただ美しき君へ贈る、願いはたった一つだけ。愚鈍と称される彼は、深雪が側に居ることをただ真っ直ぐに思う。それが如何なる朱より鮮烈で尊く、そして眩しく胸を焦がした。
深雪はこの水晶貝を見るたびに嬉しくなって、ついつい頬が緩んでしまう。
彼はきっと宝石の
だがこれがいいのだ。
深雪は既に彼が守護っている。生きる意味を貰い、まことの魔は近寄ることすら出来ない。
だから
深雪は鏡を前に化粧筆を手にし、水晶貝の
濡れた朱へと深雪が込める想いはただ一つ。彼の喜ぶ顔を、ほころぶ顔を、己が手を取る彼の笑顔を。
想いを込めて
「……お
「はい、只今……」
深雪は最後に鏡を見返す。
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