第35話


「そろそろ昼食にしよっか〜。」

そういったのは、明里。時刻は12時を過ぎ、たしかにみんな腹が減っていた。特に俺は……。

「そう言えば、朝から何も食べてないや。」

俺のお腹がグーと鳴った。はずかしかったが幸い誰も聞いない。ラッキー!


「どれ食べようかな?うどんにしよっかな。」

「僕が払うから明里さんは先に席に座ってて。」

メニューを決めた明里は注文し、お金を払おうとしたのだが、山下君がおごってくれるようだ。

その様子を見ていた俺はマサキをチラ見しながら言った。

「こういうのって男の子が払ってくれるものなんだ〜。ふ〜〜ん。」

「分かった、分かった。俺が払うからルナはどれ食いたいか選べよ。」

「私、カレー♪」

マサキは渋々財布を出した。

「ありがとう!マサキ♡」

色目を使いながら言う俺にマサキはあきれていた。

「ったく、さっきまであんなにモジモジしてたのに、どうしたんだよ。」

「マサキが言ったんじゃん。いつまでも恥ずかしがってないで楽しめって。」

「そりゃそうだけどさぁ、都合が良すぎだろ。」






昼食を食べ終わった俺達は再びプールで遊んでいた。

だが、そこに彩香とプールの職員さんが走って来た。

「ルナちゃん、大変‼︎」

あまりの2人の慌てように何事かと首をかしげた。

「そんなに慌ててどうしたの?」

「それが実は、この職員さんがボイラー室で怪物を見たって言うの。」

「それってまさか、魔物のこと?」

「たぶんそうだと思う。むこうが動く前に対処できるように討伐団を呼んでおいたから大丈夫だと思うけど……」

それを聞いて思わず苦い顔をしてしまった。というのも、俺は桜先輩から一度ひどい目にあっている。


突然地鳴りがなり、大きな爆発音がした。爆発音が鳴った方向を見てみると、建物が燃えている。

「あっ、ボイラー室が!」

そして、その上空には何者かが飛んでいた。よく目をこらして見てみると、それは人間(男)の形をしているのだが、手の代わりに大きな翼があり、口には嘴がある。この姿に俺はおおよその見当がついた。

「なるほど。たぶん、桜先輩やリリムと一緒で動物に変身できるんだ。そしてあの状態は獣人型。」

「ルナちゃん、何ブツブツ言ってるの?」

彩香からすれば、小声でブツブツと独り言を言っているルナを不思議に思ったのだろう。

「なんでもないよ。それより、職員さん!このプールにいるお客さん達を安全な場所まで避難させて。」

「わっ、わかりました。」

店員さんは全速力で戻って行った。


「フッ。お前ら2人は少し厄介そうだが無駄だ、馬鹿どもめ。このプール施設は結界で封じている。誰1人逃げられないぞ。」

鳥男はいつの間にか俺と彩香の目の前に立っていた。すごいスピードだ。

「お前の目的はなんだ?」

「お前らがこの作戦を知ったとしても手遅れだろうから教えてやる。あの25メートルプールの周囲にディメンションストーンを置いておき、最後にプールの中にこの魔王石を入れる。そうすれば、直接俺たちの世界、しかも魔城の牢獄につながるゲートを作ることができる。」

「なるほど。そうやってこのプール施設にいる者全員を捕らえる気か?」

「その通りだ。捕らえたお前らを奴隷として扱う。しかし、それだけではない。お前らを捕らえた後にこのゲートから魔物を大量にこの世界に来させ、この世界を支配する。ま、力もないお前達はそこで見ているといい。」

そう言って、鳥男はプールの中心部分に移動した。

「いまこそ、二つの世界をつなげたまえ!」

鳥男は魔王石をプールに投げ入れた…はずだった。


ーーズバッーー


黒い影は魔王石は木っ端微塵にした。


「よかった、間に合って。」

その声には聞き覚えがあった。これはリリムの声だ!

リリムが獣人型になり、爪で魔王石を破壊したのだ。


「バカめ。魔王石を破壊したことは敵ながらあっぱれだ。だが、異世界へ続くゲートはまだあるんだぜ。」

鳥男の言う通りだった。魔王石を破壊したので直接、魔城に転移するのは免れたがゲートはまだ残っている。つまり、異世界のどこかへは転移してしまうのだ。

「くっ!しまった‼︎」

リリムはゲートにおちてしまった。


「よくもリリムを……くらえ、皿ブーメラン‼︎」

俺は怒りに任せ、先ほど食べたカレーの皿を取り男に向かって投げた。

(※カレーはキレイにすべて食べており、けっして食べ物を粗末にはしておりません。)


「甘いね。そんな物、簡単に避けれるさ。」

鳥男は軽い身のこなしで、皿を簡単に避けてしまった。


「そっちこそ考えが甘いんじゃないの?頭上に注意した方がいいんじゃない?」

「なんだと……パリーンッ」

なんと、一度は皿を避けた鳥男だったがその後に重力によって落ちてくる皿の事までは考えてなかったのだ。

皿が後頭部に当たってしまった鳥男は気絶し、ゲートの中に落ちていった。


危機を乗り切り、一安心していた俺達だったが、安心はしきれない。

「ホッとしてる場合じゃない。リリムを助けないと!」


その時‼︎


ゲートからロープが出てきた。そのロープは俺を捕らえ、ゲートに引きずり込んでいこうとしている。

だが、引きずり込まれていく俺の手を引く者がいた。

「なっ、何やってるんだよ、早く手を離してマサキ。手を離さないとマサキまで異世界に!」


「いいや、離さない。たとえ異世界に行ってもルナ、お前の助けになりたい。」



ルナとマサキはゲートに沈んでいった。





「やってくれたな。人間の少女め。お前だけでもこっちの世界へ引きずり込んでやる。」

鳥男は気絶から目覚め、ルナをロープで引きずり込んだのだった。


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