第31話 打ち明ける
雨があがった。
「あの〜これは……」
明里に巫女の正体が俺だということがバレてしまった。この場合はしょうがないのだろうけど……
俺は明里にすべての事を話した。
その方が良いだろう。(元は男という事は言わないが)
・・・・・・・・「そうだったんだ…」
「信じてくれるの?」
「当たり前じゃん。親友の言葉を疑ったりはしないよ!」
おぉ、今の言葉は嬉しいぞ!
「ルナさん、話の途中すみませんがあのカニの魔物、まだ生きてますよ。」
リリムが指を指したカニの方を見ると、確かにカニが起き上がっていた。さすがにドロップキックぐらいじゃ倒せないのだろう。
「お前が噂の巫女か…」
カニが俺の方を見て言った。
えっ!もしかして、魔物からしたら俺は有名人⁉︎
「お前が何体もの仲間を殺している事は分かっている。」
なんか、殺しのリストに追加されてるのかな。怖ッ!
「死ね!」
カニは俺にハサミを振るう。
「危な!」
突然の不意打ちに、俺は屈み込み、間一髪避ける事ができた。だが、俺の後ろにあった電柱はハサミで真っ二つになり、倒れた。このハサミ喰らったらヤバいだろ‼︎
「ルナさん、あの魔物はシザーという魔物です。あのハサミはかなりやっかいそうです。」
「ハサミが厄介なのは分かってるよ。なんか弱点とかはないのか?」
「弱点は乾燥させるか、腹の部分を攻撃するかですね。」
なるほど!確かに、普通のカニは水がないと死んでしまう。腹も唯一柔らかい部分だ。この魔物も基本的にはカニと同じようだから、カニと同じところが弱点だということは、十分あり得る。
「まずはファイヤボールで乾燥させるのはどうでしょうか。」
リリムの的確なアドバイスだ。
「合点承知の助。」
確かに今は雨が止んでいる。ファイヤボールでカニ野郎を乾燥させるのも有効だろう。
※説明しよう‼︎
・ファイヤボールとはルナが覚えた魔法の1つなのだ。
「ファイヤボール」
詠唱すると、俺の頭上に球体の火が浮かんだ。
それを放てと念じるとまっすぐ、カニの方へファイヤボールは飛んでいった。
「焼きガニになっちまえー!」
俺は容赦なく何発ものファイヤボールをカニに放った。
カニはかなり弱ってきていた。
よし!ここらでトドメをさしますか‼︎
いつ殺るか、今でしょ‼︎
「とどめのドロップキック!」
ドロップキックはカニの腹のど真ん中に命中し、カニは倒れた。
「ドロップキックにこだわりますね〜…」
「確かにそうだね。」
2人は苦笑いした。
一件落着…というわけにはいかないようだ。
「止まれ!巫女」
出たよ、討伐団。カニを倒しに来たんだろうけど、俺が倒しちゃって標的が俺に変更か……。だが、桜先輩のいる様子はなかった。これなら逃げ切れるかもしれない。
「リリムは猫になって肩に登って!明里は私の手をしっかり握ってて!」
「よし!飛ぶよ‼︎」
俺は、上空に浮上し、全力のスピードで先ほどの現場から離れる。
どうにか、巻けたようだった。
◇◇◇
明里を家まで送った。
「ごめんね。家まで送ってもらっちゃって。」
「良いよ飛べるし。じゃ、また明日」
明里と別れ、俺とリリムも家へ帰る事にした。
「この杖どうしよう。直したいけど、討伐団にこれを見せたら怪しまれるだろうし」
「もともと、戦う用じゃないですしね」
「1つ考えがあるんだけど、またあの魔界へ行くのはどうかな。その隣には人間もいる国があるそうだ。もしかすると、魔物たちと戦うための武器が発達している国かもしれない。」
「なぜ、そんな事が分かるんですか?」
「前に一回行った事があって、その時にダンっていう人から聞いたんだよ。」
「要するに、今、流行りの異世界って事ですね。」
「まっ、そういう事になるね。」
「しかし、空間の歪みを見つけるのは難しいと思いますが……」
「そこは心配しなくて大丈夫!お祓い屋が持っていたはず。」
あの祠についてた空間の歪みを発生させる石をお祓い屋は持ってるはずだ。
◇◇◇
「…という事であの石貸して♡」
「なっ、なんだ、急に。しかもなんで色目を使ってる⁉︎」
「一回してみたかっただけだよ。それはどうでも良いから石貸して」
「貸してもいいが、気をつけろよ。下手したら戻ってこれなくなるからな。」
「わかってるって」
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