第28話 桜先輩VSリリム
「ルナさんには心配かけさせないようにあんな風に言っちゃったけど、全然大丈夫じゃないなぁ。普通に戦っても絶対負けちゃうし…どうしよう……」
「猫さん、あの巫女に『任せてください』みたいなことを言っていたけど大丈夫?私に勝てる可能性はかなり低いと思うけど」
「そんなことはわかってます。でも、私はル……あの方のことをお守りしなければならないんです」
危ない。ルナさんって言いそうになってしまった。巫女の正体がルナさんだとバレるとルナさんが困るから、気をつけないと。
「来るなら来い‼︎私は絶対に負けられないの」
足がガクガク震える。怖い…でも逃げるわけにはいかない。
「だいぶ震えてるね。安心して。あなたを殺したりはしないわ。だって、殺しちゃうとあの巫女の手がかりがなくなっちゃうでしょ。今、おとなしく降参するなら怪我しないで済むわよ」
「誰が降参なんかするもんですか!このー!」
私は桜さんに飛びかかった。でも、避けられるのは分かってる。
案の定、桜さんは私の攻撃をあっさりとかわし、狼の素早いスピードで背後に回ってきた。
だが、なんとか猫の動体視力で相手の動きを見ることができた。
/ガシュッ……キンッ……カキンッ…/
桜さんの爪の攻撃を私も爪でなんとか受け止めた。でも、狼と猫ではレベルが違う。
「ウフフッ、それだけで私の攻撃を防いだつもり?」
/ガブッ…/
「キャー!」
激痛が肩を襲った。
私は相手の爪攻撃を防いで満足していたが、もっと重要なことを忘れていた。相手はオオカミ。つまり、噛み付くことも当然するということだ。
「どうする、降参する? まっ、しないか。じゃ〜もうちょっと痛めつけないといけないかな」
桜さんは私の肩からキバを離すと一度、間合いを取ろうと、後ろの木の枝に飛び移った。この時がチャンス!猫は身軽に動くことができる。この瞬間に相手の背中に乗ることができれば……
上手くいった。
「くっ、しまった‼︎背後をつかれるなんて……」
「私の勝ちだ!くらえ‼︎」
私は爪で桜さんを攻撃しようとしたが、ルナさんのことを思い出した。ルナさんは討伐団の人を一切、傷つけたことはなかった。そうだ、この桜さんも決して悪いことをしているわけじゃない。魔物たちを倒すため、正義のために私とも戦っている。
やめよう、攻撃するのは。ただ、ルナさんが逃げるための時間を……
私は桜さんの背中に乗ったまま、地面に押さえつけた。そして、桜先輩の爪を地面に突きつけた。こうすればすぐには、動くことはできないだろう。
◇◇◇
私が家に帰ると夜中にもかかわらず、ルナさんは眠らずに私の帰りを待っていた。
「リリム!心配したよ。その傷どうしたんだ?大丈夫か?」
「大丈夫です。ルナさんこそ、大丈夫ですか?」
本当は痛むが心配はかけられない。
「どれ、その傷みせてみて」
ルナさんは私の傷を手当てしてくれた。それがとても嬉しかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます