第26話 討伐団の罠


 俺は肩に猫の姿になっているリリムを乗せ、コウモリの先導のもと空を飛び、魔物が襲われているという目的地へ向かった。


(そういえば、電気ネズミを肩に乗せている少年のアニメがあるが、重くないのだろうか?)

 リリムは軽いが、あのネズミはまあまあ猫よりも大きい。重いはずだ。

 ふと気になってしまった。


 そうこうしているうちに目的地に到着したようだ。場所は市街地の裏路地だった。


 空から地上を見てみると、討伐団の制服をきた男が三人、その三人に囲まれている私服の男が1人いた。多分、あの私服の男が魔物だろう。そして、あの三人の内の一人は見たことがある。確か、どこかの班の班長だった男だ。たぶん……


「あなたたち、その男性を放しなさい」

 地面に降り、声色を変え呼びかけると、その三人はニヤリと笑った。


「いいだろう。この男は放してやる。ただし、お前をココで捕まえる!」

 班長がそう言うと、私服の男を放した。私服の男はルナに頭を下げ、礼をすると一目散に逃げていった。


「お前たち、やれ!」

 班長がそう言うと、建物の陰からたくさんの団員が現れ、俺を取り囲んだ。どうやら、初めから俺が目当てだったようだ。


 あれ、そういえばリリムがいない……


「ただし、殺すなよ。麻酔銃か捕獲網弾を使え。こいつに色々と聞きたいことがあるからな」


 団員が一斉に銃を構えた。

 さすがにやばいな。どうしよう……


「ルナさん、これを使ってください!」

 リリムはそう言うと、俺の肩に再び乗った。


「どこにいたんだ?心配したんだよ」


「すみません。危なそうな雰囲気になってたので、役立つものがないか討伐団が持ってきていた武器の中から、煙幕玉を持ってきたんです。」


 おっ!それならこの窮地から脱出できることができる。


「ありがとうリリム!」


 俺は早速、この煙幕玉を地面にぶつけた。すると、煙はどんどん出てき、周りの様子は全く見えなくなった。

 今がチャンスだ! 俺はそう思い、空に飛び上がり、逃げようとした。


 しかし……


 強い風が吹いた。

「しまった‼︎」


 風によって煙幕はすぐに晴れ、討伐団に俺が空にいることにも気づかれてしまった。


「奴は空にいるぞ!噴射靴を使え‼︎」

 ※説明しよう。噴射靴とは最近、討伐団で発明された装備で、靴に空気を噴射する噴射口をつけることによって、体を身軽に使うことができ、身体能力を最大限に出せることができるのだ。




 討伐団員は噴射靴から空気を噴射し、建物の屋根から屋根へと渡り、ルナを追ってきた。


「くそっ!全然諦めないじゃないか」


「ルナさん、あるじゃないですか。逃げ切る方法が‼︎」


「えっ、どうやるの?」


「そのマントですよ。相手から一瞬でも姿を隠して、違う姿になればいいじゃないですか」


 なるほど!確かにその手があった。

 普通の自分の姿にしようとも思ったが、討伐団に召集されてもいないのに、こんなに遠くにいるのはおかしいと思い、会社帰りの女性に扮することにした。


 討伐団は巫女の姿を見失い、俺を見たがさすがに別人だと思ったのか引き返していった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る