第23話 ルナと彩香の放課後


「では、本日は昨日に引き続き空間の歪みについての議論を行う」

 大事な会議なのはわかっているが少し退屈だな〜。そんなことを思いつつ、昨日に引き続き、議論に参加していた。





 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「全然決まりませんね。一度、皆さんで案を考えてきて議論してみたらどうですかな?」


「確かにそれがいいのかもしれませんね」

 どうやらまた決まらなかったようだ。だが、話は思わぬ展開に発展した。


「そういえば、もう一つ気がかりなことがあるんですが……」

 桜先輩が言った。


「ほぉ〜なんですかな?」

 校長先生が興味深そうに立派なヒゲを撫でた。


「最近、私たち討伐団の魔物駆除活動の際に邪魔をする巫女がおりまして……」


 えっ、それって俺のことじゃない⁉︎と俺は緊張し始めた。


「その巫女は魔物を退治しているところを見た人もいれば、魔物を助けたとこを見たことがあるという人もいる、謎の人物なんです」


「なるほど、どちらの味方かはわからんが、こちらの邪魔をしたことがあるのなら敵だ!倒すのが一番いい」

 団長が威勢良く言い放った。


「いやいや、倒すのはやめたほうがいいのでは?」


「私もそう思います。倒さずに、捕えたほうがいいのではないかと…...」


「確かに、もしかすると歪みについての詳しいことを知っているかもしれない」


 どうやら、妨害してくる巫女を倒すのではなく、捕らえるという方向で決定したようだ。


 あ〜気が重い。まさか、巫女姿の自分が狙われるようになったとは……。

 まぁ、その予感は少ししてたけど……。

 でも、捕まったらどうなるんだろ。何も知らないと言っても、何か言うまで拷問とかされるのかなぁ。




 会議が終わった後に帰ろうとしていると彩香に出会った。

「ルナさん、顔色悪いけど大丈夫?」

 彩香は心配そうな顔で俺に尋ねた。彩香は鋭い。たしかに今の俺は異常なほどに暗い顔に違いない。なんてったって、討伐団から狙われる存在になってしまったんだから。


「大丈夫だよ、なんともないよ。」


「それならいいんだけど……。そうだ、一緒に帰らない?」

「うん、いいよ。」

 たぶん、一人で帰るよりは気がまぎれる気がする。



 家に帰る途中で、俺は彩香とショッピングモールへ行った。前、ゲッコが出てきていたあのショッピングモールだ。

 彩香の提案でゲームセンターに立ち寄った。どうやら、どうしても欲しい縫いぐるみがUFOキャッチャーにあるが全然とれないらしい。


 彩香は早速プレイし始めたが全くとれないでいた。というよりむしろ、下手くそなのだ。

 しかし、彩香はどんどんお金を入れて挑戦していく。たぶん、すでに2000円以上は使っているだろう。始めは黙って見ていた俺だったが、流石にこれ以上無駄遣いさせるわけにはいかないので、俺が彩香と代わり、UFOキャッチャーをすることにした。

「よーし、ちょっと貸してみ」

 俺は腕を捲り上げ、気合十分に挑んだ。←大げさw

「あっ、そこそこ。もう少し!」

 彩香は隣で応援している。


 /ウィーン、ボトン/


「やったー!ありがとう。」

 彩香が俺に軽くハグしてきた。彩香からすれば、喜びと感謝を伝えるちょっとしたことかも知れないが、元男である俺は女子からの初ハグで心臓バクバク状態だ。


「う、うん。これくらい造作もない……あの〜、そろそろ離してくれると助かるんだけど」


「あ、ごめんね。嬉しくてつい……」




「いや、むしろ毎回やってくれても……」

 ごめんなんてとんでもない。こちらからするとむしろご褒美。「離してくれ」と言ったのもこれ以上ハグされていると、気持ちを抑えられなくなりそうだったからだ。身体は女なのに、ちゃんと心は男のまま。


「ん、何か言った?」


「なんも言ってません!」





 それから、俺たちは帰ることにした。

 夕暮れの中、お互いの帰路への分かれ道で別れた。


「ルナさん、今日は楽しかったね。これ、大切にするね!」

 そう言って、俺がとってやったクマのぬいぐるみに頬ずりする。そこまで喜んでくれたのなら、とってやった甲斐があるというものだ。(金は彩香持ちだが……)


「うん。私も楽しかったよ。また誘って!」確かに今日は楽しかった。彩香のおかげで少し気持ちが楽になった気がする。

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