第22話 討伐団、給料もらえるってよ



「行ってきまーす‼︎」


「いってらっしゃい、ルナさん」


 リリムに手をふり、俺は学校へ向かった。今では朝の支度も時間通りにほぼできるようになった。


「はぁ……」

 リリムの前では明るく演じていたが、1人になり、口から深いため息が漏れた。

 昨日、マサキとは嫌な空気のまま別れてしまった。早くマサキに謝らなければならない。でも、その自信がない。



 学校についても、マサキとは話すことが出来なかった。相変わらずマサキは気さくに話しかけてくれるが、それを無視して明里たちの所へ逃げてしまった。自分が情けない。





 □放課後

 俺は今、討伐団の部室で団長、副団長、班長、校長先生交えた会議に出席していた。内容は俺が迷路の中で遭遇した、異世界へ続く『空間の歪み』についてのことだった。俺は自分の知っている全てのことを話した。


「ルナの言ったことが本当であれば、その歪みを防がなければならないな」


「突然現れたり、消えたりする歪みを防ぐのは不可能じゃない?」


「じゃ、いっそ、その歪みに団員を派遣して魔物を倒しまくるのはどうだ?」


「いや、それは無理だろう。さっきも言った通り、その歪みは気まぐれで現れたり消えたりする。行きは行けたとしても、帰りは帰れないかもしれん」


「じゃあ、どうすれば…」


 話はなかなかまとまらないみたいだ。結局、今日では決まらず、明日の会議に引き伸ばされることになった。


 俺その後に討伐部の訓練をしてから、帰ろうとしていた。


「ルナちゃん、まだ帰っちゃダメよ」

 桜先輩から止められた。


「どうしたんですか、先輩」


「親御さんが行方不明で色々と悩んでるって聞いたから。だいじょうぶ?」

 桜先輩が胸に手を当て、心配そうにしている。


「大丈夫って言いたいですけど、正直不安だらけです。親がいなくなったこと自体悲しいですけど、これから金銭面をどうするかだとか……」


「なるほどね……ルナはまだ知らなかったっけ。この討伐団は給料がもらえるのよ」


「えっ!そうなんですか?」

 ここにきて衝撃の事実だ。なぜ早く言ってくれなかったんだ‼︎


「えぇ、そうよ。この討伐団は国から管理されるようになったの。要するに、公務員みたいなかんじかな」


 俺からしたら、かなり嬉しい情報だった。親の謎の失踪から自分一人で暮らしていかなくてはならなかったので、お金に困っていたのだ。

 給料は直接顧問の先生から受け取る仕組みになっていた。


「さあ、いよいよ開封タイムです!」

 家に帰ってから、ふるえる手で給料の入っている封筒の封を切った。

 さぁ、いくら入っている⁉︎


「な、なんだと⁉︎」

 数えてみると15万円。後から、桜先輩に聞いたことだが、実績によって給料はあがるらしい。これは頑張らなければ‼︎


「ルナさん、どうしたんですか?嬉しそうな顔をして……」


「ほら。実は討伐団から給料もらったんだ♪」

 俺は尋ねてきたリリムに嬉しそうに札束を見せた。


「本当ですか⁉︎ルナさん、最近財布ばかり見ていて元気がなかったようなので本当によかったですね!」

 リリムは少し泣きながら言った。

 そんなとこまで見ていたのか。リリムにはあまり見せたくなかった姿だ。だが、リリムが心配してくれていたのは嬉しい。


「そんなに心配してくれてたんだ」

 リリムはやはり心優しい。だが、なんとなくだが、リリムはまだ自分のことを全て俺に打ち明けてないような気がしてならないのだ。リリムには深い闇がある。多分、きっと。


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