第20話 ダンピール
彼の名はダン
父が吸血鬼、母が人間のハーフだ。
彼は背が高く、モデルのようにカッコいい。性格はとても優しく、相手への気配りができる好青年。
俺はダンにこの魔界について聞いてみることにした。
「さっきの行列は何?」
あの大名行列的なものの正体を知りたい。
「あれは一年に一度、この魔界の王都の魔城から幹部の方がこの国のいろんな街に視察に来るんだ。あの方はサキュバス様と言って幹部のお一人。」
「そしたら、この国の一番偉い人がサタン?」
なるほど、さっきのサキュバスが1番偉いということではないらしい。だとすれば、この国のトップは皆が口にしていた『サタン』だろう。
「なっ、何を呼び捨てで……サタン様だよ。でも、ルナはなんでこんな基本知識を知らないんだい?」
「そっ、それはこの前頭打って記憶がちょっとなくなったんだよね〜(汗)」
痛いところを突かれ、俺は焦ったがそう答えた。
「そうなのか、大変だね。困ったことがあったらなんでも聞いてくれて構わないよ」
「そういえば、ダンは何をしてるの?」
お言葉に甘えて、気になることはなんでも聞くことにしよう。何しろ、この右も左も分からない魔界では情報だけが頼りだ。
「僕はこの街より少し離れたところの農村に住んでるんだ。親は二人とも死んでいるから一人暮らし」
ダンは寂しそうな顔をした。
「ごめん。変なこと聞いて……でも、そしたらなんでここに?」
「大丈夫だよ。僕は王都で開かれる闘技大会に出るために首都に向かっている途中なんだ」
「闘技大会?」
「その闘技大会に出て優勝すると魔王軍の幹部になれるんだ。魔王軍の幹部になることが子供の時からの夢だった」
「他のことも聞いていい?」
ダンの素性はある程度分かった。次は『空間の歪み』についてだ。
「いいけど。」
「『空間の歪み』について何か知ってる?」
「もしかして、【異世界への扉】の事かな?」
「たぶん、そのことだと思う」
「それはね、少し前から起き始めた現象らしいんだけど、そこに派遣される調査員によって、その向こうに異世界があることがわかったらしいんだ。そしてその向こうには人間という知的生命体だけど力は全くない生命体がたくさんいるらしくて、サタン様はそこを占領する計画を立てているらしいよ」
俺はその他にも幾つかのことを聞いてダンと別れた。
俺は最後にダンから
「同じ吸血鬼としてルナがピンチになった時はこの石に念じて」と言われて、青色に輝く石を貰った。だが、使うことはないだろう。使えば俺が向こうの人だということがわかってしまうから。
そして、俺は気づきもしなかった。のちにダンが俺の最大の敵になるということを……
俺はその後、しばらく人さらいのボスを探したが見つからなかった。
俺は街から少し外れたところにある倉庫に戻ってきた。
中から声が聞こえてくるので壁の隙間から覗いてみる。すると、中には大きな体をした怪物が見える。そいつこそがボスであるアブダクトだった。
アブダクトは怒っていた。なぜなら部下のダクトがやられているからである。怒りの矛先は囚われている人達に向けられていた。俺はこれは早くアブダクトを倒さないとみんなが危ないと思い、意を決して突入した。
俺が勢いよくドアを開くとアブダクトも囚われた人達も驚いた表情をみせた。
「お前がアブダクトか!」
「そうだがお前は人間だよな?」
「そうだ。お前の部下をたおしたのは私だ。みんなは悪くない!」
「ほぉ、そうか。お前がやったのか」
明らかに怒っている。額の血管が浮き出ている。恐ろしい形相である。
アブダクトはトゲのついた、鬼が持っているような棍棒を振り下ろしてきた。
巨体から振り下ろされる凄まじい破壊力の棍棒は当たれば即死だ。
俺はそれを間一髪で避けると巫女に姿を変えた。吸血鬼には変身できない。なぜなら、囚われている人達に自分も魔物だとばれたら色々とマズイことになるからだ。
アブダクトはさらに何度も棍棒を俺に向けて振り下ろしてくる。
棍棒を錫杖で受け止めるが相手の一撃一撃が重く、華奢な少女の姿では耐えることは出来なかった。
「きゃあッ‼︎」
そのまま棍棒に押され、倉庫の壁に背中を強くぶつけてしまった。
俺は一旦距離を取り、魔法を使い、攻撃を仕掛けた。
「エレキショット‼︎」
俺は電撃を飛ばした。アブダクトは棍棒で防いでしまう。しかし電撃は棍棒を伝いアブダクトに感電した。アブダクトはよろめいた。その時がチャンスと思い、必殺技を叩き込んだ。
《紫電衝撃波》
紫電の光に包まれた俺は衝撃波を飛ばした。ちなみにこの技は俺が巫女の時専用に考えた技だ。
アブダクトはそれをまともにくらい倒れた。
その後、俺は鍵を使ってみんなを檻から出し異世界への扉を渡らせた。
俺が自分も異世界への扉に入ろうとした時に凛の靴がこの倉庫に落ちてあるのに気が付いた。しかし檻には入ってなかった。もしかすると凛はこの魔界に迷い込んだのかもしれない。
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