第16話 錫杖


「只今、討伐団の武器倉庫に居ます。」

というのも、今日は新しく仕入れてきた武器を使えるかどうかチェックする日なのだ。予算的な関係から中には中古の武器も含まれているのでなおさらチェックが必要なのだ。

俺たちの班は倉庫の奥の担当。

そこで俺が武器の点検をしていると、いくつもの輪っかがついている棒が置いてあった。

「桜先輩、これはなんですか?」

気になったので聞いてみる。


「あ〜〜それね、それは錫杖しゃくじょうというものよ。」

桜先輩が大量の武器の影から出てきた。

「でもね〜、それはそもそも武器じゃないから捨てようかと思ってるのよ。あ、でも捨てたらバチが当たるかも」


捨てると聞いて、なんとなく勿体無く思ってしまう。何か、使い道は無いのだろうか……

「あ、そうだ!」

ひらめいた!

この錫杖を巫女姿の時に手に持っていたら、雰囲気が出るかもしれない。

「桜先輩っ、良かったらこの錫杖もらってもいいですか?」


するとあっさり答えが返ってきた。

「どうせ捨てるつもりだったからいいよ。」

結局、捨てるつもりなんかい!




□ルナの家

「はぁ〜、疲れたな。」

つかれていたのでベットに寝転んだ。家に帰った後のベットに飛び込む瞬間は至福の時だ。


「ルナさん、その杖どうしたんですか?」

リリムが興味津々に聞いてきた。


「あ〜それね。錫杖っていうものらしいよ。巫女姿の時に使えるかなと思って、持ってきたんだ」


「それでしたら練習がてら、魔物倒しに錫杖を使ってみたらどうですか。ルナさんお疲れのようなので私がそのような依頼がないか、祠から探してきます」






◎祠

リリムが祠の中を覗いてみると、中に一枚の手紙が入っていた。


(最近、近所の神社で怪物みたいなのがでます。どうにかしてください。)


リリムはこれはピッタリな依頼だと思い、早速ルナに知らせに行った。






□ルナの家

リリムが祠に行っている間に仮眠をとり、少しだけだが疲れがとれた。


「ルナさん、ピッタリな依頼ありましたよ!」


「ホント⁉︎ じゃあ、早速行ってみようよ!」





□神社

巫女姿になった俺と、猫の姿のリリムは神社に着いた。

すると、突然‼︎

俺たちのいる神社の敷地に結界がはられた。目には見れないが、ハッキリと分かる。きっと、俺が魔物(吸血鬼)になってしまったからだろう。猫のリリムも同じく気づいたようで、全身の毛が逆立った。



「まんまと引っ掛かったようだな」

神社の社の中から俺と同い年ぐらいの男が出てきた。

「噂は聞いていた。最近、お前が魔物退治をしていると。だが、それやめてくれないか。こっちは魔物や悪霊などの退治やお祓いをしているが、お前のせいで商売あがったりなんだ」


「いきなりそんなこと言われても‼︎」



『破』

男がそう口にすると、俺は衝撃波を食らったように吹っ飛んだ。


「痛っ‼︎」


吹っ飛ばされた俺は今何が起きたのか、まったく理解できない。


「ずいぶんと驚いているようだな。俺は魔物退治をするために今まで修行をしてきていろんな術を身につけた。まだまだいろんな術がつかえるぞ。」

男は自慢げに言った。


リリムは吹き飛ばされた俺に駆け寄る。

「ルナさん、大丈夫ですか?あの男は危険です。普通の人間だし、魔力も感じられないのにあんな攻撃ができるなんて」


「リリム、大丈夫だよ。この杖を試すいい相手になりそうだし」

錫杖を持ち、男に攻撃を始める。

「くらえ、エレキショット」

俺は詠唱すると錫杖の先端から電気の玉を飛ばした。


男が『守』と唱えると男の前にバリアがはられ俺の攻撃がはじかれた。そして男は、俺に向かって駆け出し、同じような杖を持ち、俺に振り下ろした。


俺は、それを自分の錫杖で受け止める。

その衝撃、火花が散った。


男とルナは一旦、距離をとった。

「なかなかやるようだが、お前も魔物なんだろ」

そう言うと、男は『封印』と書かれた札を俺に投げつけた。

「くっ‼︎」

その札は俺に命中してしまった。


「なんだこれっ、体が痺れて動きづらい。」

俺の体はビリビリと痺れ、身動きが取れない。


「一つの札では完璧に封印できないということは、雑魚ではないようだな」


その時、丁度6時のチャイムがなった。


すると男は顔が汗だくになり、明らかに焦っている。

「やべぇ、俺の見たかったアニメが始まる。録画もしてなかったし、早く帰らなければ。この戦いはまた今度な」

そう言うと、男は帰って行った。


意外な展開にボー然としていた俺とリリムだったが、危ないところだったしラッキ〜ということで家に帰ることにした。


「それにしても、シビれて動けないルナさんも色っぽくてよかったですよ!」


「うっ///。やめろよ、恥ずかしいから‼︎」


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