第15話 討伐団初仕事


 結局、ろくに眠れずに朝を迎えてしまった。


 寝ぼけながら朝食を食べているとスマホに電話がかかってきた。桜先輩からだ。

「もしもし、どうしたんですか?桜先輩」


「ルナちゃん、魔物が出てきたんだけど今から来れる?」


「大丈夫ですけど……どんな魔物が出たんですか?」

 俺は明里たちがもしかしたら狙われているのかもしれないと思い聞いてみた。


「港の工場で暴れてるらしいの。怪力が自慢の魔物よ。」


「分かりました。今から行きます。」

 暴れているということは明里たちじゃないはずだ。ひとまず安心した。



 俺が現場に行く準備をしているとリリムが部屋に入ってきた。

「ルナさん、どこか行くんですか?」


「うん、今から討伐団の仕事なんだ。」


「そうですか。頑張ってきてください‼︎」


「そういえばさリリム。あのカメラ、あの後どうした?」


「捨てましたよ」

 即答にやや驚いた。俺と違って、断捨離が得意なタイプだろう。


「そうか。それならいいんだけど……あっ、そうだ!リリムがこの前言ってた魔界の話だけどさ、詳しく教えてくれない?」


「はい、構いませんよ」

 リリムは話し始めた。

「時々、町のあちこちに『空間の歪み』みたいなのが出来て、そこから行けるんです。それで私、たまたま見てしまったんですけど、その歪みが突然できて、その中から魔物が現れたんですよ」


「ということは、その歪みの先の魔界から魔物が空間の歪みを通ってここに現れているということなの?」


「おそらく、そうだと思います。」


「リリム、私が討伐団で出ている間に、その『空間の歪み』についてもっと調べて欲しいんけど、いいかな?」


「分かりました。任せてください!」


 リリムに『空間の歪み』の調査を任せ、俺は魔物が出現したという港の工場へと向かった。





 30分程して俺は港近くの工場に着いた。

「先輩ッ、遅くなってすみません。」


「いやいや、気にしなくていいよ。というか、逆に早すぎるくらいじゃない?」

 桜先輩にそう言われてドキリとする。

 たしかに普通の交通手段を使えばもっと時間がかかる。それを自力でまっすぐ飛んできたのだから、早く着いたのも当然だった。


「えっ、タクシーで来たんですよ。できるだけスピードを上げてもらって」


 これでなんとか誤魔化せそうだ。

「そうだったのね。あっ、そうだった。ルナちゃんはまだ私の班のメンバーとは会ったことないよね、紹介するね。」

 桜先輩は4人を連れて俺の元に戻ってきた。


 メンバー紹介ーーーーーーーーーーーーーー

 ・龍樹・・・3年生。副班長。この班の頭脳的な役割。頭が良く、的確な作戦を立てられる。


 ・奈由・・・2年生。桜に忠実で桜を尊敬し、憧れている心やさしき人。戦闘の実力もかなりのもの。


 ・拓・・・2年生。腕は立つが、あまり考えずにまっすぐ行動するタイプ。


 ・彩香・・・2年生。2年生ながら、桜と同じくらいの実力を持っている。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 俺は驚いた。何故なら彩香がその中にいたからだ。

「彩香も討伐団にいたんだ⁉︎」


「うん。でも秘密だったから言えなかったんだ。これからよろしくね!」



 話が一段落してから桜先輩が声をかけた。

「紹介も終わったし、そろそろ工場に乗り込むよ。」


 6人が入っていった工場の中にはゴツゴツした岩のような魔物が暴れていた。

「龍樹、作戦は?」

 桜先輩が龍樹先輩に作戦内容を確認する。


「この魔物は、体が岩で出来ているのでかなり硬く、刀では歯が立ちません。なので、一箇所に攻撃を集中させて下さい。そして、その部分からひびが入ってきたら、そこに爆弾をセットします。それで倒せるはずです。」




 それから数分後

 班の皆はすぐにその魔物を倒してしまった。俺は皆のあまりの強さに全然ついていけなかった。

「ルナちゃん、初めてだったし、大変だったでしょ。これから、少しづつ慣れてこうね。」

 桜先輩は言ってくれたが、これからこれについていけるのか不安になった。






「ただいま〜。」


「お帰りなさいルナさん」

 リリムが出迎えてくれた。


「リリム。で、どうだった。」


「ルナさんが朝に言っていた通りでした。あと一つ新しくわかったのは、その歪みの中に間違って入っていってしまった人たちが複数人いるみたいです。」


「なるほど。調べてくれてありがとう。」

 俺の予想が当たったのはいいが、複数の人たちがその歪みに入ってしまったのは気になるな。

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