第14話 謎の男
□明け方
ルナの家の玄関前に男は立っていた。
男は「やはりここか」とつぶやくと、強引に鍵穴を壊し、中に入っていった。
何者かの足音で目が覚めたリリムは疲れきってぐっすり寝ているルナを起こした。
「ルナさん、ルナさん、誰かが階段を上ってこの部屋に来てますよ!」
「なんだよ、眠いんだから寝させて欲しいんだけど」
「でも、ほら」
リリムが耳を澄ます動作を見せたので俺も耳を澄ませた。すると、リリムが言った通り本当に誰かが階段を上ってきている音が聞こえる。こんな真夜中に誰なのかと、恐ろしくなってくる。
俺とリリムは身構える。
足音がだんだんと大きく聞こえるようになってくる。もうそれほど近くにいるということだ。
2人でクローゼットの中に息を殺しながら潜んでいると....
部屋のドアが開き、俺と同年代ぐらいの男が入ってきた。
「そこにいるのはわかっている。出てこい!」
男は言った。ルナたちが息を殺して身を潜めていることはとっくにばれているのだろう。
このまま隠れているのは無駄だと悟り、俺達は隠れていたクローゼットから出てきた。
「やはりここにいたか」
男は1人で納得した様子で頷いていた。
「やはりってどういうこと?っていうか何者?」
「俺は殺し屋カイトと呼ばれている。」
「この前も一度来たがお前はいなかったからな」
「何故会ったこともないお前が、お……私の部屋をしっているの?」
「お前、不思議なカメラを持っているだろう。本当にそんなもんが売ってあると思うか? お前があそこに行くことを予想して売ってたのさ。それにGPSを仕込んでおいたんだ。」
「ということは、リリムを騙してそのカメラを買わせたってこと?」
「まあ、そうなるな。1度行った時はお前の両親しかいなかったから、口止めとしてその2人を殺したがな」
その言葉を聞いた瞬間、俺の怒りが爆発した。
「お前がやりやがったのか‼︎」
先ほど『一度』と言っていたのが妙に気になっていたが、そういうことだったのか。
「これ以上は怒りで話をまともに聞いてくれないだろう。まぁいい。もともとお前を殺すのが目的だ。」
カイトはそう言い終えると右腕の袖をたくし上げる。
「⁉︎」
次の瞬間、カイトの右腕が刀に変形した。
「あんまり驚いてっと、その隙に殺られるぞ」
カイトはなんと、腕を刀に変化させて俺に斬りかかったのだ!
「あぶなっ‼︎」
首チョンパを狙っていた刀を間一髪で避けた。
俺の前髪を刃がかすめる。
「お前がその気なら、俺だって!」
真紅の美しい双眸に綺麗な銀髪。吸血鬼少女の魅力を最大限引き出すゴシックドレス。
俺は吸血鬼に変身して、召喚呪文で剣を手に持ち、カイトはの刀を受け止める。剣と刀がかち合い、火花を散らせる。
「ほう、変身すると外見上は目と髪の色が変わるのか。ん、胸の大きさもか?」
カイトはメモをとっている。いったい何に使うのだろうか?
「それは変わってねぇよ!」
それにしても、俺が驚いたのはカイトが腕を刀に変形できるということだ。
「まさか、お前も人体実験されたのか?」
こんな人間、普通にはいない。となれば俺やリリム同様、人体実験をされたという可能性が1番高くなってくる。
「あぁ、そうだ。」
やはり そうだったのか。
「だが、だからなんだというんだ?」
カイトは左腕を右腕同様、刀に変形させる。
「おい、防ぐだけでは俺には勝てんぞ」
「くッッ‼︎」
カイトの双剣の猛攻撃に、俺はだんだんと防戦一方になっていった。
やがて疲労で、カイトの攻撃を受けるようになっていった。致命傷は防ごうと必死で剣で受け止め、あるいは避ける。だが、カイトの刀は徐々に俺の身体をかすめていき、ゴシックドレスは切り刻まれ、ところどころ肌が露出してしまっている。
「ったく、諦めの悪いやつだ」
カイトが左腕を後ろへ一旦退かせ、右腕だけの攻撃に変化した。
(片腕だけならなんとか持ちそうだ)
そんな俺の淡い期待はすぐに消えてしまうことになってしまった。
不意にカイトが左腕を突き出したのだ。
左腕は銃に変形しており、銃口は俺の胸へ突き立てられた。
「しまっ……。」
その刹那、一発の銃声が響き渡った。
俺の意識は、ぼんやりと靄がかかっていき、やがて真っ暗になっていった。
「大丈夫ですか?ルナさん。」
慌ててリリムが駆け寄る。
「安心しろ、死んでない。どうやら魔力切れらしいな。こいつは吸血鬼だろ?
血を吸って魔力を補給したりしていなかったのか?」
「あっ、そういえば今までに一回もルナさんは血を吸ってない‼︎」
「せっかくこれから楽しいとこだったのにな。」
カイトは舌打ちをして帰っていった。
◇◇◇
俺はベットの上で目を覚ました。
「大丈夫ですか?ルナさん。目を覚ましてくれて良かった」
リリムは涙目で俺へ抱きついてきた。
ベットから体を起こす。
「リリム、なんでお……私はここにいるの?」
「ルナさんは魔力を使い切ってしまったんです。それで、血を吸わなければならなかったので……」
俺が、リリムを見てみると腕のところにキバの跡があった。
「まさか、リリムが私に飲ませたの?」
「はい。ルナさんが眠っていたので飲ませるのが難しかったですが」
俺はリリムに申し訳なく感じた。俺よりも小さな子に血を吸わせてもらうなんて。
「リリム、ごめんね。」
「なんで謝るんですか?これからは、私の血を吸って下さい。」
リリムは当然のように言った。
「えぇ、いいの?」
「もちろんです!」
リリムはニコッと可愛らしい笑顔を見せた。
「ありがとう。リリム」
リリムがあまりにもいい子なので、感動して涙が溢れてきてしまった。
「だ、大丈夫ですか⁉︎ ルナさん、どこか痛いんですか⁉︎」
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