第13話


 俺は飛んで教室の窓から教室に入っていった。この飛べる能力はいつも重宝させてもらっている。


 /シュタッ/



「さてと、明里はいるかな?」

 しかし、教室に明里の姿はなかった。部活に行ったのだろうか?



 体育館に行ってみるも、明里の姿はどこにもなかった。もしかして、もう帰ってしまっているのかもしれない。


 ※ルナは吸血鬼なので空を飛ぶことができ、伝説のマントのおかげで姿を変え、透明になって教室に入ったので、空を飛んでいて巫女姿でも、誰もルナの事を気づかないのだ。



 学校を後にし、明里の通学路をたどっていくことにした。



 数分で明里をすぐに見つけることができた。

 明里は黙々と1人で歩いている。

 そういえば、明里は毎週金曜日は部活に行かずに終礼が終わるとすぐに帰ってしまうのだ。

 何故だろうと思考を巡らすが、全くわからない。


 引き続き明里を追っていると、明里は帰り道の途中にある喫茶店に入っていった。


「1人で喫茶店?」

 いつも明るくて、友達と一緒にいる事が好きな明里が1人で帰って、しかも1人で喫茶店に入る。明里にしては不可思議な行動だ。


 例によって姿は見えていないので、俺も店の中に入る。するとどうやら今日は定休日らしい。だが店内にはわかいひとからお年寄りまで、人が数人いて何かを話していた。


 話に聞き耳を立てていると、驚くべき事が分かった。なんと、ここにいる人たちは全員魔物なのだ。

 毎週金曜日にこの店に集まって、いろいろと情報交換をしているらしい。

 とはいえ、どう見ても人間の姿をしている人たちを魔物とは思えない。そして何より明里が魔物だったなんて……。


 ショックを受けたが、これでようやく依頼者とその理由がわかった。それに、みんなが魔物なので、逆に俺も正体を現しやすい。いっちょ、やってみたかった登場方法をやってみるかな。




 *明里目線

 店内に突然、旋風が吹き、テーブルのメニュー表やティッシュなどが風に舞った。

 旋風の中心にはかすかに人のような陰が見える。


 やがて、旋風が止み、そこには女狐のお面をつけた巫女が立っていた。

 まさか、と思った明里はその巫女に声をかけた。


「あの〜、まさか祠の主の方ですか?」


「うん。そうだよ....こほんッ その通りです。わたくしが祠の主です。」


「そしたら、あの願いを叶えて頂けるんですか‼︎」


「はい。その前に依頼の話を詳しく聞かせてくれないでしょうか


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ※ルナ視点

 はなしを聞いてみるとあまりに酷い話だった。

 討伐団が人に化けた魔物を見破り、駆逐するために、吸ってしまうと魔物の姿に戻ってしまう気体を発明し、それによってどんどん仲間が襲われたそうなのだ。


「安心してください。わたくしが皆さんが危険になった時には助けにきます。それでは」と言って俺はもう一度旋風を起こし去った。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 □自宅

「ということがあったんだよ〜。」

 マサキに今日あった事を話す。


「危険になった時ってどうするんだ?」


「使い魔のコウモリにこの街のパトロールをしてもらうんだ。そして、何かあったら超音波で連絡してもらう。そして、できれば魔物の人たちを逃がすだけにしたいけど、場合によれば討伐団と戦わないといけないかもしれない」


「ルナ、無理するなよ」


「えっ、無理?」


「いや、お前が危険な目にあったら、その……心配だからな。だから、危ないと思ったら無理はするな」


「う、うん///。わかった」


 お互い照れくさくなってしまった。だが、マサキが俺の事をそんなに心配してくれてた事は嬉しい。




 それから7時間経った真夜中の2時の事だった。

 コウモリから連絡があり、目が覚めた。


 眠い目をこすりながら、俺は目的地に向かった。


 コウモリから教えてもらった目的地に着くと、そこには討伐団らしき男子と魔物であろう高校生の女子がいた。対峙している2人からは緊迫感が伝わってくる。

 俺はこの前、結構かっこよく決まって、お気に入りになった登場方法で登場する事にしよう。

 旋風を巻き起こしてその場に姿を現した。


 二人とも驚いて口をあんぐり開けている。

 ふっふっふ、決まったな!


「お前、何者だ」

 男子が問いかける。そりゃそうだ、急に現れたら誰だって不思議がるだろう。


「おれ………わたくしはその魔物の方を守りに来た」


「じゃーお前とその魔物は仲間ってことか?」


「いいえ、わたくしは討伐団の敵でも魔物の敵でもありません。中立の立場ですが、あなたたち討伐団が間違ったことをしようとしているのを防ぎに来ただけです。」


「魔物を倒すことになんの間違いがあると言うのだ?」


「あなた達は人間として大人しく暮らしている魔物をも倒そうとしているのですよ。」


「うるさい‼︎これは上からの命令だ。」

 男子はそう言うと装備していた銃を構えた。まったく、討伐団とはいえ、高校生に銃を持たせるのはいかがなものだろうか?


 討伐団とは基本的に戦わないというのが俺のルール。


「逃げましょう」

 女子に声をかけ、手をひく。

「痛いっ‼︎」

 だが、女子はバランスを崩し倒れてしまった。

「大丈夫ですか?」


「足を怪我してて。もう動けそうにないんです」

 みると女子はすでに脚に深い傷を受けていて、歩けそうにもない」


「それでは、わたくしが抱えますので」

 俺は女子をお姫様抱っこで抱えて空に飛び上がった。まさか人生初のお姫様抱っこが、女で女を抱える事になるなんて……。男の頃に一度はしてみたかったなぁ。


 俺と女子が空中に逃げたとわかると男子は発砲した。

「逃げ切れると思うな!これは対魔物ように作り出した特殊弾だ‼︎」


 銃声が続けざまに何発も聞こえる。


「あぶなっ‼︎」

 俺は弾を避けながら、なんとか逃げ切れた。


 だいぶ離れたところまで行き、そこで女子を降ろした。


「ありがとうございます。お礼で何かできればいいんですけど……」


「お礼はいいですよ。これからは気をつけてくださいね」

 女子を家まで送り、そこで別れた。


 それから俺は家に帰り、布団の中に潜り込んだ。

「ルナさん、どうでしたか?」

 リリムは俺が帰ってくるまで起きて待っていてくれたらしい。なんていい子だ‼︎


「うん。上手くいった」


「そうですか。それなら良かった。」


 それから俺は眠りについた。







 その頃、真夜中の道を歩いている1人の男がいた。

 その男はタブレットの地図アプリを見ながら、歩みを進めている。そして、何故か地図にはルナの家の場所に赤いマーキングがしてある。

 悪魔の足音が着々とルナの元へ近づいていた。



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