第10話
○次の日○
学校にて担任の先生から校長先生が呼んでいると言われて校長室に行くことになった。
校長室の前まで来るとさすがにちょっと緊張する。
なんで俺が呼ばれたんだろうか?
俺何かやったかな?
だが、いくら思案しても分からない。
不安を残したまま、校長室の扉をノックした。
少し間が空いてから「どうぞ」と声がした。それは嗄れていて、お年寄りだということを感じさせた。おそらく、その声の主が校長だ。
「失礼します。2年の夜月瑠奈です。」と言って、部屋の中に入った。
恐る恐る部屋の中に入ってみると、部屋はかなりの豪華な装飾になっていた。
見回すと部屋の両端には、龍の石像があり、一番奥にも防具をきた勇者的な女の人の像があった。
「そんなに緊張しなくていいからこっちへ来なさい」と校長先生が朗らかに言った。少し緊張がとける。
俺は言われた通りに校長先生が座っている席の前に来た。机にはいろんな書類などが置いてある。
「あの〜私に話とはなんでしょうか?」
俺が尋ねてみる。
「早速、本題に入るとするかのぉ〜」と校長先生が言った。いかにもお年寄りという感じだ。
いままでは全校朝会などで校長先生を遠くからしか見たことがなかったので改めて間近で見ると、思っていたより歳をとっていて、優しげな顔をしていた。しかし、目は嘘が効かないような全てを見透かしているような眼だ。
「君には、入って欲しい組織があるんじゃ」
俺は『組織』という突然出た単語にはてなマークが浮かぶ。
「組織とはどんなものなのでしょうか?」
俺が聞くと校長先生は続きを話し始めた。
「この学校には、魔物を倒すために作られた組織があるんじゃ。
君は一人で魔物を倒したみたいじゃが、人間が吸血鬼になった者は珍しく、君はいろんな可能性を秘めているのじゃ。
じゃから、君を安全に守るためにもこの組織、討伐団に所属して欲しいのじゃ。」
なるほど。この学校には部活が少ないし入っているのも他の学校よりは少なかった。その割には、放課後に帰宅部ですぐ帰って行く人も多くはなかった。それは、この組織があったからなのかと納得した。
いや、納得してる場合じゃなかった。
なんで俺が吸血鬼だって知っているんだ?
やはり、俺が最初に感じた全てを見透かしているような眼は本当になんでもお見通しなんだろうか。
俺は、聞いてみた。
「先生、なんで私が吸血鬼だって知ってるんですか?」
「誰だって秘密は隠しきれないものだよ」
校長先生はそう言った。
結局、校長先生が俺の正体が吸血鬼であると知っていた理由は分からずじまいだった。
確かに、俺一人っていうのも不安だったしこれは入ったほうがいいかな。うん、入ったほうがいい気がする!
「わかりました。入ります!」と俺は返事をした。
校長先生は笑顔になった。
「良かった。今日の放課後にもう一度来なさい。あと、このことは他の人にはくれぐれも話さないでくれるかのぉ」
○放課後○
これから校長室に行かなければならない。
あの時は入りますとか言っちゃったけど、今考えると、断ったほうがよかったのかもしれない。なぜかというと、これは昨日のゲッコを倒した後の話だが、家に帰ると親がいなくなっていたのだ。
それどころか、生活用品など全てがなくなっていた。
そのため、これから金を稼いで暮らして行かなければならない。
なので俺は箱を作り、その中に解決したい悩みごとなどを書いた手紙とお賽銭(500円から)を入れると悩みごとを解決するというシステムを実行した。大抵のことは吸血鬼の魔力でどうにかなるはずだ。
もちろんこれが、俺がやっていることもひみつだ。
問題はここだ。
当然、討伐団からしたら吸血鬼も魔物の一種として退治してこようとするだろう。おそらく校長先生は討伐団のみんなに俺が吸血鬼だということは明かさないだろう。
これからは、今までの倍は気をつけないといけない。
俺があれこれ思案しているとマサキがやってきた。
「深刻な顔してどうしたんだ亮…ルナ」
まだ、ルナと呼ぶのが慣れないらしい。
マサキには吸血鬼のことも言ってるし、信用できる親友だ。
このことを言っても、誰かに言いふらしたりはしないだろう。
「実はね、両親が突然いなくなったんだ。」
「本当か⁉︎ これからどうするんだ。」
「少しの間は、家にあったお金と自分の金で過ごせるだろうけど、金を稼ぐためにちょっとした商売をしようと思って」
俺は校長室に呼ばれたことや、依頼を受けてそれを解決することなどを全て話した。
「いいんじゃないか」
マサキは賛成してくれた。
「でも、吸血鬼のことを知っているのは校長だけなんだろ。討伐団の奴らには黙っておかなきゃいけないなら、お前が吸血鬼の姿の時に襲われるかもしれないってことだよな。俺もお前をできるだけサポートするからバレないように頑張れよ‼︎」
マサキはいいやつだなぁ〜!
「ありがとう‼︎マサキ。これから頑張るよ。」
それから俺は、校長室に向かった。
扉をノックし、名前をいうと、入りなさいと聞こえた。
俺が校長室に入ると、そこには、3年生の先輩が2人、校長先生と一緒に立っていた。
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