第6話


 この話は、俺に何があったかの全てをマサキに明かした日の夜の出来事である。



「あっ!赤ペン切れてるの忘れた」

 宿題にとりかかっている途中、インク切れの赤ペンに気づき、近所のコンビニに買いにいくことにした。


 時刻は午後8時頃。住宅地が多く、車は走っていない。街灯だけが照らす薄暗い道路を1人、歩いていた。


「…⁉︎」

 その時、電柱の影で何か変な形のものが動いていた。よく目をこらすがまわりが暗く、その正体は分からない。

「なんだあれ? 」

 不思議に思い、怖さ半分興味半分で近づいてみるとなんとそこにはスライムがいた‼︎


「これって、あのドラ○エのスライムとそっくりだな。」



 そう言ってしばらく眺めていると、突然スライムが俺に襲いかかってきた。


 油断しきっていた俺はスライムから顔を覆われた。そのせいで、息をすることができない。


「きゃっ、たすけて。く……る……し……い………」

 もうダメだと俺は直感的に悟った。きっと俺はこのまま苦しみ、もがいて、死んでしまうのだろう。


 と、その時‼︎

 俺の身体から銀色のオーラが溢れ出てきた。

 そして、俺の黒髪は月のような光を放つ銀髪になり、服装もマントを身につけており、その下は結構露出が高めの黒のドレスに変わっていた。


「なんなんだこれ?」

 全く状況が読み込めない。だが、一つ言えることは今の瑠奈おれには人間ではない、何かの力が秘められているということだ。


 スライムは先程の俺のオーラで俺から離れた道端に吹き飛ばされていた。


「もしかするとこれが吸血鬼の姿?」

 そうとしか考えられなかった。だが、今はこのスライムをどうにかすることが先決だ。俺は何か技を放つことができないのかと思い、試しに手のひらをスライムに向けてみる。しかし何も起こらない。

 もう一度「何か出ろ!」と願いながら手のひらを突き出すと、なんと、手のひらから銀色のビームが放たれたのだ。


「おぉ、スゲェ〜‼︎」

 なんか、めちゃくちゃファンタジーぽいじゃん!



 /ジュワッ/

 俺のビームを受けたスライムは跡形もなく消え去ってしまった。



 その後、なんとか人間の姿に戻り、買い物を終えた俺は家に帰り、なぜかどっと疲れを感じ、いつの間にか眠ってしまっていた。



「ん……なんだろう?窓がコツコツ言ってるような気がする」

 ふと目が覚めると窓ガラスからトントンと音になっていることに気づいた。カーテンからは月明かりで、小動物のようなシルエットが浮かび上がっていた。怖い気持ちを抑えつつ、窓を見てみると、そこには1匹の可愛い黒猫がいた。

「ここニ階なのに一階の屋根を登ってくるなんて猫ってすごいな」

 猫を自分の部屋に入れてやった。


 その猫は、俺の部屋に入ると、猫の姿から中学一年生ぐらいの歳の可愛い女の子に変わった!猫のシルエットから人間のシルエットに変化していくのがなんともエロい。


 少女に姿を変えた猫は俺の前に立つと丁寧にお辞儀をした。

「初めまして!あなたの使い魔や、あなたのこれからのサポートをするためにきました。よろしくお願いします。」



 俺はあまりの驚きに呆然と立っていた。





「あの〜、いろいろ聞きたいことがあるんですけど.... まずは、名前はなんなの?」

 いろいろ聞きたいがまずはそこだ。


「リリムと言います。 本当の名前は覚えていないんですけど.....」


「どういうこと?」


「私も、瑠奈さんと同じで人体実験されたんです。コウモリの他に動物になれないかという実験で、猫になるのは成功したんですけど、何かに失敗したと言われて……何に失敗したのかはわからないんですけど。」


「リリムも連れ去られて人体実験されたってこと?」


「はい。普通は実験に成功するのが極一部なんです。私は、失敗作だといって処分されるはずだったんですけど、ある理由で処分は免れました。リリムっていう名前もそこでつけられたんです。ですが、それ以前の記憶はまったくなくて……」


 そう言うと、リリムは実験されていたときのことをおもいだしたのか、突然泣き出した。


「大丈夫?」


「すみません。何でもありません。」


 リリムは涙を急いで拭うと無理に笑ってみせた。

 多分、俺に心配をかけさせないためだろう。

 俺は、リリムがどうしようもなく可哀想に思えてきた。何かこの子のためにできることはないのだろうか……。


「リリム、これからよろしく‼︎」

 今の俺には何も出来ない。できることといえば、この子の『使い魔にさせて欲しい』という願いを受け入れることぐらいしかできないだろう。でも、いつかはこの子が心から笑顔になるようにしてあげたい。


「ハイ‼︎」


 リリムはニコニコして返事をした…ように俺は見えた。


 でも、その時の俺は思いもしなかった。リリムとの出会いが俺をさらに非日常な世界に巻き込んでいくことを…


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