送る日常、そして

お昼休みはウキ○キウォ○チングとは関係無く、僕らは僕らで昼休みを大いに謳歌している。

僕の席の周りには、前の席に二階堂と隣の席のユーモラス女子とが集まり、雑談に興じながらの昼食タイム。

「やっぱりぃ、ゴキ○リとカ○ドウマって生理的に受け付けない虫のトップランカーだと思う訳よぉ」

その議題が何より生理的に受け付けないのだが……食事中にとんでもない発言すんな!

「ははっ…相変わらずだな」

「ミノルはすぐツッコむんだからぁ…突っ込むのは夜にベッドの中で、ね?」

二階堂の弁当けっこーデカいな。

何か隣で女子らしからぬ発言が聞こえたが、スルーがベストだろう。

「ああ、食欲旺盛だからな」

「ミノルは、お弁当じゃなくてミーをタ・ベ・テ?」

隣が……うぜぇ。

「まぁまぁ」

二階堂が僕を宥めるように肩に手を置く。

「あれれぇ、もしかしてこれからBL的な流れぇ?」

「まぁ、そうかな」

おい!と、二階堂の手を払い声を大きくする。まさか、二階堂ってそうだったのか!?

「まぁ、普通に嘘だけど」

デスヨネ!!!

危ない危ない……急にボケを入れてくるから困りものだ。

「きゃははっ」

隣がケラケラと手を叩いて笑っている。

……はぁ。


僕らの当たり前なありふれた日常の断片なんてこんなもの、くだらない会話と変わらない生活と人間関係。

誰もが経験するはずの日々。

僕が望んで、そのために必要最低限の努力をして、作り出した環境。

少し物足りないが悪くはない日常―――そんな感じでこんなものだろう。

妥協点で及第点。

安牌は安牌である。

これが創作上の世界なら、この後に日常をぶち壊すような事件やドタバタな出来事が起きて、主人公が「やれやれ」やら「平穏な日常を返せ」とか言いながら動き出すんだろうけど、あくまで創作の世界のお話―――僕の生きている世界には適応されない。

当たり前だ。何かが起きた所で些細な変化だろうし。

大前提に、悲しいかな僕は主人公じゃない。

過去には主人公に憧れたり、そんな願望が無かったと言えば嘘になる。

しかし、自身の世界を生きて、自身の世界しか知らないからといって、自分は自身の世界の主人公という確信も確証も出来ない。

だからこそ―――。


「あぁー、またミノルは自分の世界に入り込んでぇ」

あぁ、悪い。ちょっと考え事があって。

「何それぇ?あっ、もしかして…ミーの可憐さについてぇ?」

あぁ、問題無い。それについて一瞬たりとも考えてなかったわ。

「即答ってヒドくなーい?」

「ははっ」


主人公でも脇役でも何でも良いから、僕は………。




その後は、一悶着餅巾着を乗り越えて授業を次々と消化し、終わって気付いたら放課後になっていた(笑う所あったよ?勿論笑ったよね?モチだけに)。

僕は部活動には参加してないので、帰り支度をしてクラスメートとダラダラ生ダラ具合で雑談交えて教室を出る。

この後カラオケでも行こうか、なんて話しながら玄関で靴を履き替えていると、下駄箱には靴以外に一枚の白い手紙のようなものが入っていた。

あれっ、これってまさか……あの伝説として語られている存在である《ラブレター》なのか!?

えっ、ちょ、おまっ……!!!

爆発寸前のマジで爆破する5秒前(略してMB5だ!この元ネタを知らない子は是非ググッてみてほしい)な僕の鼓動を無理矢理落ち着かせ、誰にも見られないように隠しながら書いてある文章を覗き込む。

その手紙に書かれていたのは長くない一文だけだった。

悪い、忘れ物取り入ってくるから先に行っててくれ!と慌てながら周りに言い、周囲の反応を見る余裕もなく、踵を返し全力でその場を離れる。

目指すは屋上。

その先にある現実とは―――。

手紙にはこう書かれていた。


《君の正体を教えてあげる、屋上で待ってるから》


誰とすれ違ったかなんて知らない、誰かに話しかけられた気もするが関係ないしどうでもいい。

確信はないが、僕に関係し知るべきものである《核心》は屋上で待っている気がする。

少なからず待っていてほしいという願望も無い訳ではない。

僕は僕自身を知るために階段を昇る。

その結果、今まで作り上げて誤魔化していた存在を殺す事になる訳で……。


出来ないと思い込んでいた《自殺》をする羽目になるのであった。

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