第19話 薄野の蘆
「そなたは、
信虎は言った。
「三好一族は堺と結びつきが強く、茶の湯に
九十九髪は足利義満が所有していた
「一族の実力者じゃった
何かを思い出したらしく、
「良い刀をもらったことがある。
「
なかでも有名な句がある、という。
弟の
知らせを聞いた長慶は、
との
と返し、客に弟の死を静かに告げ、敵が攻めてくるであろう、と言って客を帰した、という。
「それって時代の流れを
紅は感心して言った。
「修理太夫は兄弟にも恵まれておったが」
有能で忠実な三人の弟が手足となって、彼を盛り立てた、という。
「何より彼奴の
「家格?」
「普通、身分の
信虎は言った。
「その者を上の家格の家の養子や養女にしたり、
「そんなの、当たり前じゃないですか。
「うむ。」
「松永なんぞ、無名の松永のまんまで
茶をすすり、
「
付け加えた。
「そちは
「公方さまも修理太夫さまと仲良くなさったらよろしかったのに。」
紅が言った。
「修理太夫さまはどんなに力があっても、少なくとも御自分は、分を超えようとはなさらないんだし。」
「そういうわけにもいかなんだ。」
信虎は言った。
「今の公方は
紅は首を振った。
「人には、どうしても譲れないことというものがあるのじゃ。」
「修理太夫さまって」
紅が言った。
「
「彼奴の嫡男が一年前に病死しての。」
信虎は言った。
「それ以来、
「まあ。
「いや、摂津守は、兄に
ぎろり、と見た。
「皆、
紅にも、この人がわかってきている。
彼らしい、と思った。
「かしこまりました。いつでもどうぞ。」
頭を下げた。
「
「お待たせ致しました。上さまにお
「おお、そうか。」
信虎は立ち上がった。
紅は手をついて頭を下げた。
襖がすっと開いた。
信虎の姿が向こうへ消える前、先ほど声を掛けた者の姿がちらりと見えた。
美少年だ。
珍しいことではない。
公方さまの周りにはいつも、
ここへ奉公に上がってすぐ、
(わかんないのね)
(
(無理も無いけど)
「ええ、そうよね、美しい少年がたんと居るわ。」
一人が笑いを
馬鹿にする
紅も、うっすら知っている。
公方さまは『そういう
よく夜中、公方さまのお部屋で宴会を開いている。
こいつもその中の一人だろう、だが。
視線を感じた。
(
はっとして顔を上げると、何でもないような顔をして、すっと襖を閉めた、でも。
その
襖に
そこにはもう、誰の姿も無かった。
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