第18話 混沌
でも彼女が気になるのは、本物の
(
例えば、松永
(
感はどうしてもぬぐえない。
でも彼は
(違う)
その人物はいつも、
『相伴衆』というのは、元々は、将軍の宴席や
てかてかと光る巨大な頭に、逆三角形に
初めて会ったとき、
「見慣れぬ顔じゃの。」
大きなぶ厚い唇を開いて、向こうから声をかけてきた。
「皆が言うとった
長尾、って。
(上杉の敵、だ)
ひどい目にはあったけれど。
紅の、上杉家に対する忠誠心に、
(お
紅は、あさってのほうを向くと、かしこまった。
「おそれながら、
「ふん」
苦笑した。
「やめい。申次なぞおらぬ。
「はっ。」
老人のほうを向いて、かしこまった。
「山内とはどうしてもお呼びになれない御事情がおありでしたら、今後は長尾とお呼びになってもお返事いたします。」
「あるわ。」
「
「関東管領家にとっては
「えっと、藤原南家、じゃなくって、四辻の娘、でございますっ!」
「四辻の娘とな。又か。わしゃ、
「今……。」
「ええい、本当の名、じゃ。」
「
「ホ」
目を細めた。
「
「孫でございます。」
「息子をさんざん悩ませたそうじゃが、死んでもまだ、てこずらせる気か。」
元甲斐国主、
「お
紅は言った。
「受け取っておきます。」
それから、信虎にお茶を出すのは、いつの間にか紅の
気難しい男だと、先輩の侍女や
実際、
「当たり前じゃ。」
ふんぞり返って言った。
「
「公方さまの補佐である
「うむ、
「なのにどうして、あんな大きな顔をしているんですか?」
「公方はほとんど都にいなかった。その間に都の実権を全て、彼奴らが握ってしまったからじゃ。」
応仁の乱以来、将軍職は、その
管領を出す家の中でも、
その細川家の中でお家騒動が
将軍家は、欲しいままに首の
前公方はとうとう、都から追われて逃げた先で亡くなっており、現公方も三好と
将軍が都に居ないため、実務は全て三好が行っていて、しかも何の
「見ろ、松永霜台なんぞ三好の
小侍従に不思議がられてしまった。
「何で
紅が信虎に
「まだ松永霜台のほうが、侍女たちの受けはいいように思うけど?」
「はあ。」
あの目付きが不安で、とは言えなかった。
「あの方も、いわくつきの方だから」
武田信虎は戦に強く、甲斐の領国統一を成し遂げたが、その過程で領内に
「親を追い出すなんて、親不孝もいいところだから」
嫡男が悪い噂を広めているんじゃないか、という見方もあるだろうけど、と
「あの方が甲斐を追い出されたときには」
家臣一同、
もっとも、
「あの方が
それはさておき、と続けた。
「あなたもそろそろ子供は卒業なんだから」
気をつけて行動しなさいね、と注意された。
信虎には、甲斐での評判の部分は
「わっはっは」
笑われた。
「男はの、年をとると
信虎は言った後で、ちょっとにんまりした。
「そうか、霜台よりわしが良いか、やはり何じゃの、
いえ、あなたはご自分のことしか考えていらっしゃらないからわかり
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