第14話 四辻家
娘を馬に乗せて屋敷まで送り、礼をすると引き止めるのを
武士が力と力で勝負している
戦乱に追われて地方に
この
「
門番は用心しながら扉を開けた。
そこに、少女が供を二人連れただけで立っているので、驚いたようだった。
「
「へえ。じゃあ、あの
「えっ、会ったのかい。」
「はい。多分、おそらく。」
「いや、どういう連中だか、顔を見た者は居ないというから。へえ、本当に会ったとはね。」
ともかくこれからは夜、出歩かないほうがいい。命が幾つあっても足りないよ、と忠告された。
奥に通された。
待っていると、
「遅うなってしもうた、間に合うかの?」
「急げばどもないでっしゃろ。」
「早よ、済まそ。」
「
「はっ?」
驚いて顔を上げた。
老人は
……ということが、ぱっと頭に浮かんだわけではない。ここが
「ああ、
「馬の骨って……。我が家はそもそも、藤原四家のうち、
老人は、手にした扇を、
「もうええ、忙しいさかい。後は
息子を連れて、そそくさと席を立ってしまった。
(そもそも、あたしの名前、
それから半月ほど、紅は、この家の侍女から、女中働きの初歩を教わることになった。
その後、親子と対面することはなかった。後に、雇われた先で大きな
ある日、荷物を
「あの、こちらのお屋敷は?」
「こちらは
「御所?内裏、ですか?」
「ここは」
侍女は言った。
「
時の将軍は、第十三代、
『
室町幕府といえば『
将軍の権威は、長らく地に落ちていた。
武力を持たない足利将軍家は、応仁の乱以来、都を支配するその時々の諸勢力の
義輝自身も子供のときから、その時々、有力な勢力の神輿として、
四辻の侍女は、紅を公方の侍女に引き渡すと、これで用が済んだとばかり、後ろも見ずに、とっとと帰って行った。
紅が、四辻の侍女の後姿を心細く見送っていると、公方の侍女が、
「何をぼうっとしているの。さっさと来なさい。」
紅は
その様子を
「あれが、例のか。」
「そうや。」
別の人物が言った。
全部で三人。
二人は
「よく見よ。」
最初の人物がお付きの者に言って、場所を代わってやった。
「あーっ!」
怒りで声が
「あ、あいつだっ!」
「使い物になりそうかな。」
最初の人物が言った。
「いえっ、なりませんっ!」
お付きの者が断言した。
「それにしても、聞きしに
二番目の人物が言った。
「
「ふっふ、何しに行っていたのやら。あの
最初の人物が笑った。
「ああもう、その話はせえへんといて。」
二番目の人物が、
「
最初の人物が言った。
「それは又、気の毒。」
二番目の人物が言った。
「俺も面倒を見てやるとしよう。」
と、最初の人物。
「それは益々、気の毒。」
「ふん。」
鼻で笑った。
「何とでも言え。今夜は出かけるぞ。」
お付きの者に言った。
「皆に言っとけ。」
お付きの者はすぐ、
彼女は、
「わかったって言っといて。」
お付きの者を
「又、美人だからって、目が
「でも子供でございましょう?」
「どうかしら。女ってすぐ大人になるから。二、三年もしたら
言いながらも、目の前に山と積まれた
「いくら
「かしこまりました。」
「毎日やらせることは、その日その日に私が指示する。」
小侍従は言った。
「それで様子を見ましょ。」
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