第7話 軍師
「よろしいですか。」
紅は
「入れ。」
部屋の中から声がした。
二人は今、
見舞いの後、すぐ帰るつもりだったが、この家の次男にぜひ教えを、と
「お話があります。」
「申せ。」
「
紅は言った。
彼も願いが
遅刻してきたり、着物が汚れていることがある。目の下や
「先日の広間での出来事が噂になって」
「本人は、それについて何も言わず、歯を食いしばって我慢しています。」
「それで。」
「それで、って……ひどいです。いじめている者を
「そちが出て行ってどうする。」
定行は言った。
「ずっと付いていて
むくれている孫娘を見ながら思った。
(やれやれ、誰に似たのか、わしの孫とも思えぬ
もっとも自分の人生を振り返っても、決して利ばかり追求してきたわけでもないが。
長生きするのも、と定行は思う。
考え物じゃな。
(見たくないものも見えてしまう)
さて、どうするか。
(帰りには
与六は
定行は与六を一人、庭に呼び出した。
その
「
見たところ年より幼く見える口から、すらすらと答えが出る。
「私は
自分が身に着けている新しい着物を見せた。
「連中が
「ふむ。自分で解決したか。」
「話のわかる連中だったから助かりました。もっと
平然として言った。
「そなたは」
定行が言った。
「皆を納得させる
「はい。」
目を輝かせた。
「殴られるのは慣れていますが、出来たらやめてほしいです。痛いから。」
幼い子供の表情に戻って言った。
「残念だが、そんなものは無い。」
定行は言った。
「この世は分というもので成り立っている。基本だから、それを越えようとする者が叩かれるのは当たり前じゃ。」
与六は
「どうじゃ。わしに学問を教わるのは嫌になったか。」
「はい……少し。」
定行は笑った。
「正直な奴じゃの。」
「人の世界は
言葉を切って、与六を
「そちはそれでも高みへ上りたいのじゃろう?ならば、回り道に見えても、何の意味もないように思えても、学べ。さすれば、もっと世の中がよく見えるようになる。見たくないものも見えるようになるかもしれぬが、それでも学んで、見よ。学問は、世の不正を正し、不公平を無くす手助けになるのじゃから。それが分を越える方法よ。他に道は無い。」
与六の表情を見てとって、笑った。
「そちにはまだ、難しいの。」
「私はもう子供ではありませぬ。」
「今はわからなくても、お言葉はしっかり心に刻んでおきます。そのうちわかるようになるまで、がんばります。」
「がんばっているといえば」
定行は
「そなた、詩が好きなようじゃの。」
「あ、はい。」
表情が明るくなった。
「面白いです。」
「詩の本を貸して進ぜよう。
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