第5話 越後
怒られた。
いや、ぽつり、ぽつりと静かな声で
彼には
自分は、どっちかというとお屋形さまに
お屋形さまは気性が激しく、火のように神がかった
父、
お屋形さまが
彼の家、
彼の祖父は、お屋形さまの父の弟である。
お屋形さまが
お屋形さまは仏門に入られている。お世継ぎはいない。
彼の家は親類
だから、
「
次男である彼が、
「もっと考えて行動することが必要なのが、まだわからんか。」
ぐうの
その後、お
想像通り、彼女だった。
でも今日の彼女は、昨日の彼女ではなかった。
「
固い口調で言って、礼儀正しく頭を下げた。
顔を洗って、髪を
なんか、がっかりした。
やっぱりこの子も、何処にでもいる普通の女の子だったんだ。
こちらも礼儀正しく挨拶した。
よそよそしく冷たい雰囲気のまま、対面は終わった。
喜平二は席を立って拾ってやった。
手渡す際、彼女が、つと彼に身を寄せて
「イ・ジ・ワ・ル。」
はっとして彼女の顔を見たが、もう何事も無かったような顔をして、
父に尋ねた。
「あの方は、どういうお方なのですか?」
「
琵琶島城は、当時有数の港であった
宇佐美一族は鎌倉幕府の
お屋形さまの父、つまり喜平二の祖父の兄である
この時代、
為景は
ところがこれに反抗したのが、
東京を中心に行政が行われている今日では想像しにくいが、当時は交通が不便だったこともあって、縦に長い日本を、飛騨山脈とその支脈付近を境に、東と西に分割して統治していた。つまり西が室町幕府、東が
関東管領は鎌倉公方の
関東管領を出す上杉家は
幕府も考えていて、鎌倉公方が権力を持ちすぎないよう、関東管領は鎌倉公方ではなく、室町幕府が任命することとしたのだが、幕府と関東管領は仲が悪い。
為景はそこに目を付け、関東管領上杉家の
弟を殺され、越後を奪われた形の関東管領は当然、面白くない。
為景は絶体絶命の危機に
更に、定実を
いずれも宇佐美定行が裏で糸を引いており、
最後は、自分が立てた新しい関東管領・
その後、定行は、為景に
「それが、今の上杉家の
政景が言った。
上杉定実のあと、守護である越後上杉家は断絶した。景虎は守護代行として越後を統治していたが、そこへ北条氏に追われた関東管領・
このひとが、世にいう
「宇佐美殿は、
「それで、我が家とは。」
「我が家も、越後における関東管領・山内上杉家の
豪族の中でも、上杉家の被官であるという意識の強い家と、
上田長尾は、山一つ越えれば関東という地理的条件があって、
(お屋形さまを育て上げた師……)
「父上、お願いがあります。」
喜平二は手をついた。
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